"Clint! "
Exclusive interview with Jack Mathews



ジャック・マシューズとの独占インタビュー




74歳になってもまだクリント・イーストウッドは、良い物語を見つける時は 興奮させられると語る。


「高く飛び上がったりはしないよ」
5番街にあるホテル・ピエールのスイート・ルームに落ち着きながら彼は語る。
「でも、まだまだ飛び上がってみたいと思うね」


現在の彼の満足そうな表情は、水曜日に公開される "Million Dollar Baby" のせいだ。 「ミスティック・リバー」に対する最優秀監督賞の候補者として2月のアカデミー授賞式に出席した時点では、製作しようとは思ってもみなかった映画である。 早い段階の批評がひとつの兆候だとすれば、彼は2月にタキシードを着て戻って来るだろう・・・今度は、最優秀監督と最優秀主演男優の候補者として。 元ボクシングの“カットマン”であるＦ.Ｘ・トゥールによる短編集の一編から脚色された "Million Dollar Baby" は、「ハリウッド・レポーター」や「デイリー・ヴァラエティ」から賞賛の評を受け、ロジャー・エバートは "masterpiece"（傑作）と宣言した。


この映画は、イーストウッド演じるロサンゼルスの厭世的なボクシング・トレーナーと、プロボクサーとして成功するために訓練することを彼がいやいや同意させられる、31歳のウエイトレス、マギー・フィッツジェラルド（ヒラリー・スワンク）との間に発展する父娘の関係を中心に描いている。 もし、あなたが女性版「ロッキー」のイメージを思い浮べるとすれば、あなたはこの企画を拒絶し続けたスタジオと同じ考えだ。 「私が彼ら（スタジオ幹部）に言ったのは、これはボクシング・ストーリーではないということだ。この物語は全て、希望や夢について描かれたものだ」 近代美術館で行われた "Million Dollar Baby" のプレミアのために現在ニューヨークに 滞在しているイーストウッドは語った。
「それはラブ・ストーリーなんだ。ボクシングはただそこにあるだけにすぎない」


ボクシング映画における型にはまった考えが消えないことに対し、自分のキャリアにおける恐らく最も本質的な人間ドラマ、そして自分の最も本質的な演技に対して集中することを持続しながら、イーストウッドはそれらを受け入れることを拒んだ フランキーのマギーに対する愛が試される後半の場面で、われわれは、彼が今まで近づいたことのない 脆弱な段階のイーストウッドを見るのである。
「私がこれまでにして来なければならなかった以上に、厳しい決断をさせる役だった"」 と彼は語る。 "Million Dollar Baby" の第三幕においては、今回のアカデミー賞シーズンの話題になろうとしており、主演俳優の投票用紙にイーストウッドとスワンクを記入しそうである。 「ボーイズ・ドント・クライ」の演技で5年前に同賞を獲得したスワンクもまた、この作品に おける自分の仕事ぶり語る時までもイーストウッドに魅惑されていた。
「彼が現在まで演じてきた中で最高の演技ね」、スワンクはきっぱりと語る。
「私は彼を尊敬しているわ」



イーストウッドの映画製作効率は長い間、他の映画製作者たちやスタジオ幹部たちの間で畏敬の対象となっている。 彼は自分の映画をあっという間に（本作は38日間かかった）、そして格安な製作費（本作は3000万ドル）で作るのである。


それにもかかわらず、彼と製作者のアル・ルディが"MDB" を売りに行った時に、白地式小切手を手に入れるはずだったところで彼らは虚ろな表情となってしまった。 イーストウッドは、「ミスティック・リバー」と同じ事が起こっていると語った。


「人々はこう言うんだ、『頼むよ、我々に何か良い企画を持って来てくれ』と。それで私が何か持っていくと、彼らは言う。『いや違う、これじゃない』ってね」。


この30年間イーストウッドと提携を結んでいる後援者である、ワーナー・ブラザーズは、"MDB" の脚本を頑固に拒んだ。彼は言った。


「いいだろう。私はそれを作るつもりだよ。ここか、あるいはどこか他のところで」


迫られたスタジオ側は、アメリカ国内配給権として制作費の半分を支払うことに応じた。 残りは独立製作会社であるレイクショア・エンターテインメントが払った。


イーストウッドは、今日のハリウッドにおける独創的な想像力が模倣されていることに怒っている。 「スタジオでは誰もが毎日、続編ものやリメイク、昔のテレビ番組の改作物に関心を持っている」と彼は語った。


「その原因が企業環境にあるのか、単にアイディア切れなのかはわからない。かなり近いうちに、彼らは「ローハイド」（イーストウッドをスターにしたテレビ西部劇）の改作をやりたくなるだろうね」


実際、彼は今もなお「ダーティハリー」シリーズをリメイクすることをせがまれている。
「私は言ってやった。『あなたはどうするつもりだ？』と。すると『川でフライ・フィッシングをしている最中の男から始まります。彼は釣りの道具箱に AARP（全米退職者協会）のステッカーを貼った退職者です。やがてある劇的な出来事とともにあなたは用いられ始めて。そしてハリーは仕事に復帰するのです』だってさ」 （考え直して・・・）「そんなこと、誰がわかるだろう？」彼は付け加えた。
「ひょっとすると、あるライターが何か見事なストーリーを作れるかもしれない。決してやらないとは言わないよ」


奇妙な言い方だが、イーストウッドの経歴は、今もなお活発なだけでなく発展上にある。
あらゆる年齢の多くの監督たちが「ミスティック・リバー」や"MDB" のような良質な映画を連続して自慢出来るわけではない。 また私たちは思い出さなければいけない。
彼は候補者として、アカデミー賞の授賞式に出席するまでは60歳代だった。
「許されざる者」に対して製作者としての最優秀作品賞、最優秀監督賞、最優秀男優賞の ノミネートをもたらした最高の経験の後、彼は既に得た成功に甘んじたかもしれない。


彼はそうはならず、だいたい1年に1本の割合で映画を作ってきた。
その一方で彼は、自分の所有するカリフォルニア州カーメル市にある牧場へ彼にインタビュ ーするためにやって来た時に出会った、元ベイエリアＴＶのレポーター、ダイナ・ルイズと新しい家族を始めるための時間を求めている。 日曜日に8歳になった彼らの娘モーガンは、"MDB" において、スワンクに手を振る少女役として映画デビューをしている。 ここ数年間イーストウッドは、引退の話題を持ち出すレポーターたちをからかっている。 しかし、彼にはどんな怠業もないようである。


彼の次回作 "Flags of Our -Fathers" は、彼がこれまで手掛けてきた中で、最も意欲的な作品かもしれない。 スティーブン・スピルバーグによって製作される予定のこの作品は、第2次世界大戦における硫黄島の戦いと、スリバチ山に星条旗を掲げたことで有名な男たちについて書かれたベストセラー小説を脚色している。 イーストウッドはまだキャストは決まっておらず、恐らく来年の夏前に撮影を始めるつもりはないと語った。


「骨の折れる仕事になりそうだよ」彼は語る。 「最近の数作とはかなり異なるタイプの映画だからね。でも私たちが自分の仕事をすれば、それは特別な作品になるだろう。

2004　/　12　/　12

Clint: Not planning to retire from biz クリント：ショービジネスから引退するつもりはない 文：ジェームズ・ヴァーニエール (James Verniere)



「引退の予定はないね」とクリント・イーストウッドは語る。


しかし、カレンダーでないとしても時計は気にするベテランのヘビー級チャンピオンのように、 74歳のイーストウッドも試合中に時間を無駄にするつもりはない。


ボストンを舞台にしたデニス・ルヘインの小説を脚色した、第一級の監督作品「ミスティック・リバー」が多数の批評家のトップ10リストに登場した1年後、イーストウッドは、アメリカのパルプ・ノワールの傑作を映画化している "Million Dollar Baby" という名の彼の最新作に関する質問をこなしている。


同作品においてアカデミー賞受賞のフィルムメーカーは、若い女性ボクサーを受け入れることにいやいや同意するという、贖罪を捜し求める気難しいボクシング・トレーナー、フランキー・ダン役も演じてもいる。


喜劇と悲劇が痛ましくミックスされたこの作品には、モーガン・フリーマンも出演する。
彼は、フランキーの最も古くそして唯一の友人である、エディ・“スクラップ・アイアン”・デュプリス役とナレーター役という２つの務めを果たしている。


「脚本は3年ぐらい前に渡されたんだ」と、カリフォルニア、カーメルの自宅からの電話に おいて、イーストウッドは語ってくれた。
「ヒラリー・スワンクは死ぬほど主人公の役をやりたがっていたよ。私はすぐに彼女を起用しようと考えた。 モーガンはその役をかなり気に入ってくれた。彼は非常に堅実で良い演技をする俳優の一人 だよ。人は多くの場合、彼は（演技が巧いことは）当たり前だと思っているけどね。 ぴょんぴょん飛び跳ねなかった（喜ばなかった）のは、融資してくれる人間だけさ」、と彼 は辛辣に語った。


続編ものや昔のテレビ番組の映画化ばかりの時代にあっては、イーストウッド級の映画製作者でさえ 映画の資金が提供されるまでは苦労している。


「『ミスティック・リバー』のようなものだった。誰もがうまく言うのさ。 『いやあ、いいね〜、うまく書けてるね、でもちょっと固いなあ』」と彼は語る。


最近、イーストウッドは引退について多くの質問を受けると語る。


「でも、引退するつもりはないね。人は、自分の心がそうしろと命ずる時に引退するんだ。題材があれば、私はまだ映画作りを楽しむよ。私は続編やリメイクをやりたいとは思わない。でも、何か新しいものを見つけることができれば、それを根気よく続けたいね。私はUSAトゥデーで「ミスティック・リバー」の批評を見た3日後に、私たちはそのことを自認したんだ」


イーストウッドは長期休暇を何も計画していない。
次に彼は、"Flags of Our Fathers" に取り組む予定だ。
硫黄島に星条旗を掲げた6人の兵士の1人、ジョン・ブラッドリーを題材に、彼の息子である ジェームズ・ブラッドリーが書いたドキュメント小説の映画化である。

2004　/　12　/　18

SPARRING PARTNERS: Seasoned director Clint Eastwood knows how and when to fight for an unconventional film


スパーリング・パ−トナーズ：
百戦錬磨の監督クリント・イーストウッドは、型破りな映画と戦う方法と時期を知っている。



文：テリー・ローソン (TERRY LAWSON　フリー・プレス　ムービー・ライター)



ビジネスの関係を考察してみよう。仮にあなたは自営の請負業者であるとしよう。1、2の例外もあるが、あなたは30年間に渡って同じ大企業相手に働いてきている。 たいてい君がする仕事はこの企業の金を儲けることだ。------大金を、時には何百万ドルと。 普段は何百万も儲からないが、あなたは信頼出来て倹約的であり、常に予算通りか予算以 下で終わらせ、いつも仕事を早く済ませるので、あなたは少しの金も失うことはない。
あなたはかなり有望な仕事人のように聞こえるだろう。


したがって、ハリウッドで働いていない者には、後に続く文章がちょっとわかりにくいと気づくかもしれない。 クリント・イーストウッドの2003年の作品「ミスティック・リバー」が2つのアカデミー賞を獲得後（このドラマは3000万ドルの製作費で、アメリカ国内だけで計9000万以上を稼いだ）、イーストウッドはワーナー・ブラザースの重役たちと会い、彼が新しい映画に興味を持っていることを話した。 その映画は、F.X.トゥールという名で書かれた短編小説を元にしていた。
彼は本名ジェリー・ボイドという元カットマンであり、カットマンとは出血したボクサーの傷口を止血する肉体の芸術家の仲間の一人である。


「私は重役たちに、私が持っていた、ポール・ハギスによる "Million Dollar Baby" という名のこの脚本の基本的な筋を話した。それは、女性にプロのボクシングをいやいや教える、年老いたジムのオーナーの物語だった。」とイーストウッドは語る。 「私が“年老いた”という言葉を言った時、彼らが、私が作品を監督すると同時にその役を演じるだろうと想像したと、すぐに思ったよ」


「いずれにせよ、彼らは“要らないよ”と言うんだ。興味がないのさ。ボクシング映画は興行成績では振るわない、というのが彼らの言い分だ」


その映画はボクシングの世界を舞台にしたがボクシングを描いた作品ではないことを、---　さらにそれは、家族とつながりそして野心と贖罪を描いていることを重役たちに話したと、イーストウッドは語る。


礼儀に欠けた、円熟していないプロであれば、彼らは頭がほかの場所についていると言うかもしれない。 しかし、かなりの長い間、映画ビジネスの世界にいる（俳優として40作以上、監督しては30作以上手掛けている）、今年75歳になるイーストウッドは、全く理解出来なくても、ともかく作品を作る機会を受け入れるのである


「私は彼らに、何らかの方法でも映画を作るつもりだと話した。彼らは私に幸運を祈ると言った。私は、2、3の他のスタジオへ企画を持って行ったが、どこでも特別の興味を示さなかった。そこで、私は何かを考え出さなければならなかった」


幸い、イーストウッドはレイクショア・エンターティンメント社で初期の支持者を見つけた。
「ミスティック・リバー」ほど高価でない企画であることを見積もったイーストウッドが、制作費の半分を払うことで同意されたのだった。


こうして彼は、キャスティングをし、製作準備をしながら、着実に前へ進んだ。
結局、ワーナー・ブラザースは、イーストウッドが長年で働いてきたチームとは異なる仲間に率いられて、企画を再考し、映画を支持することを決めた。


○　わずかな宣伝　わずかなプレッシャー



それは、思いがけないこととなった。
金曜日、デトロイト圏で公開された "MDB" は、"Sideways" と並んで、今年、最も喝采を受けた映画となったのである。


ワーナー・ブラザースは、アカデミー賞の選考資格を取るために、作品を年内にニューヨークとロサンゼルスで上映させることに慌しく急いだのだった。 本作は、恐らく、作品、主演、脚本、助演（モーガン・フリーマン、元ボクサーで、ジムのマネージャーであるイーストウッドの長年の友人を演じている）の各部門でノミネートを受けるであろう。 そしてヒラリー・スワンクである。彼女は、自分をトレーニングすることを保守的なイーストウッドに納得させる31歳の食堂のウェイトレスを演じ、最優秀主演女優賞の有力候補となっている。


「信じられない贈り物をもらった気分ね」とスワンクは語る。
彼女は既に、実際の事件に基にした1999年のドラマ「ボーイズ・ドント・クライ」の、 性的に屈折した演技が認められて、オスカーを獲得している。
「アカデミー賞を受けて、すべての注目を浴びることは、まさにケ−キの上で砂糖で飾られているようなものね。この役を得られてクリントと仕事を出来るのもそのおかげよ」


「自分では、私たちはただ、レーダーの下ですばやく動いたようなものだと思ってわ。わかるでしょ。 多くの評論家たちは、驚きたい、物事を発見したいと思ってるの」とスワンクは語る。
「私が言いたいのは、最近は、最初の場面を撮影する前から映画の宣伝が始められるでしょう。予想外に何かが来るというのは爽快だってことよ。この映画のセットには広告担当者はいなかったの。私たちが映画を作っていることを誰でも知っていたとは思えないわね」


「実際『ミスティック・リバー』と同じ事が起こったのさ」とイーストウッドは語る。
「あの映画の製作に関してもワーナーは乗り気でなかった。私たちがロケする準備をしていた時、彼らは皆、「マトリックス3」か何かで頭が一杯だった。放っておかれたのが、上手くいったのさ。わかるだろ？彼らはいつも私を監視したり、注意したり、キャステングの提案をしたりはしないんだ。私は最終編集権を持っていて、彼らに対し格安な値段（制作費）を設定している。だから一度ＯＫをもらったら、自分好きなように出来るんだ。」


ワーナーがキャステイングに関わることを、イーストウッドが認めれば、スワンクは役を得ることを出来なかったであろう。


過去の多くのオスカー受賞者がそうだったように、スワンクの受賞も、魔法にかかったように信用に値されるものとならなかった。 「ボーイズ・ドント・クライ」の後は、スリラーの「インソムニア」が、やや成功していただけだった 。


「彼女に会ってすぐに、私は彼女がマギーを演じるにふさわしいと確信したんだ」と イーストウッドは語る。
「私が心配した唯一のことはボクシングだった。なぜなら、ただボクサーを演じるだけでも、多くのスタミナが伴うからね」 そのうえ、リングの中で行うことを習得していると観客に納得させることが出来なければ、彼らは物語に乗ってこないだろう、わかるね？・・・ファイターのように見えなければならないんだ」


イーストウッドは、スワンクがまず第一に運動好きだったのが助かったと語っているが、 彼にとって重要な点だったのは、
「この役を完全に委ねられることを実際に熱望していた点で、ほとんどマギーの ようだったね。彼女は猛烈に練習したよ」、ということだ。


彼女はやらねばならなかった。映画は全部で38日間で撮影された。 「ミスティック・リバー」で主演したショーン・ペン曰く、
「クリントはリハーサルに時間をかけたり、異なった方法で多くの場面を撮影したりすることが全く無い。彼自身、 一人の俳優として、自分のキャラクターを理解するのは当然のことだと思っている」


「もちろん、多くのファイティング・シーンは振り付けだが、実際に殴られることもあるから、彼女はボクシングをしなくてはならかったよ。彼女はあちこち打たれて、何回かは動揺していた。でも彼女は決して挫けなかったね」とイーストウッドは語る。


「彼女は激しい女性だったね。私たちには、彼女は正しい選択であったとわかるまで、長い時間はかからなかったよ」


○　経験はひとつの資産である



フリーマンはどうかと言えば、起用には頭を使う必要はなかったと、イーストウッドは語っている。 長い間、彼はイーストウッドのお気に入りの俳優のひとりであった。
また彼は、彼らが共演した最初の作品1992年の「許されざる者」における彼らの相性を、ほとんどすべての人たちが注目したと語る。


「私たちは、多くの点で似たもの同志なんだ。私たちは長い間活動してきたし、二人と も働き続けるのが好きだ。働いている現場でばかげたことをして多くの時間を費やすことも好きじゃない。私たちは一緒にいると本当に気楽なだけだ。それは一目瞭然さ」


イーストウッドは、人々が劇場へ足を運んでくれるなら、アカデミー賞の噂も気分が良いと語る。 そして彼は、「許されざる者」を含む彼の他の作品とほぼ同じくらいに "MDB" に満足している。


イーストウッドは、数週間前に彼の妻が、夕べを開催してアカデミー賞の監督賞を受賞した 1992年の「許されざる者」のリマスターとリミックスされたＤＶＤを見る計画を提案したと 語る。
「でもいまだにそれをする暇がないんだ。改めて見たいと思っている作品なのに」


ヨーロッパの映画監督たちはしばしば、その経歴の後半で自分の最高の仕事をすること があるが、アメリカの伝統にそれはない。：偉大なアメリカの映画監督たちのほとんどは 、引退するか、過去の名声に安住する。または更に悪いことには、昔の自分自身のパ ロディとなってしまうのだ。
イーストウッドは、
「たぶん、あまりに早い時期に傑作を作ってピークに達した者は、その後何年も、そ れを決して繰り返すことが出来なかった挫折感を持って過ごすのだろう」
、とオーソン・ウェルズを引き合いに出す。


さらに彼は、ビリー・ワイルダーのような人物もいると語る。60代で映画製作をやめた後の彼は自分の時代は去ったと信じていて、活動を再開するよう説得されることはなかった。


「私は彼らの何人かは世俗的に信用を失ったかと考えるか、年を取るにつれて、世間との交際が途絶えるようになった気がする。私が私自身のキャリアについて語ろうとすることは、何でも利己的に聞こえるだろうが、最近した仕事に関してはかなりうまくいったと感じてるよ」とイーストウッドは語る。 「作品のいくつかは自分の望むような結果にならなかったし、そしてある作品は期待した以上に良い結果だった。でも、映画作りはよりいっそう楽しんでるよ。思うに、私が今までやってきたことより、現在していることのほうががもっと気楽なせいかな」


第2次世界大戦中の硫黄島の戦いとスリバチ山に星条旗を掲げた男たちを題材にした、 ジェームズ・ブラッドリーのベストセラーを元にした、彼の次回作 "Flags of Our Fathers" を作ることに同意したのも、それが理由かもしれないと、彼は語る。
この映画についてイーストウッドは、

「今まで作ってきた映画とだいたい同じくらい複雑だね。だからそれはひとつの挑戦になると思うよ。 でも、『許されざる者』を見ながらリクライニング・シートで寝そべっているより、近頃は挑戦していた方がましだと考えるな」

2005　/　01　/　02

以下は、米 "MSN" エンターテインメントの特集ページからです。
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Clint Eastwood delivers another critically acclaimed drama and Oscar favorite with 'Million Dollar Baby'


文：ケヴィン・ラリー (Kevin Lally)






クリント・イーストウッドが現代の映画の象徴になるのに、長い時間はかからなかった。
1955年にユニバーサル映画の契約俳優として映画デビューした後10年未満で、テレビ・ シリーズ「ローハイド」のかつてのスターは、セルジオ・レオーネのスタイリッシュ粋 な作品の数々においてしかめっ面の“名無しの男”として、愛情を込めて 「マカロニ・ウエスタン」と呼ばれる新しいサブジャンルを推進した。


1960年代中頃から興行成績に影響を与えたスター、イーストウッドは、 1971年、「ダーティハリー」において、激しやすいサンフランシスコの 刑事ハリー・キャラハンという、もうひとつの象徴的な役を得て、 その続編は、"Go ahead, make my day" というキャッチフレーズを不滅にしている。


1971年のスリラー「恐怖のメロディ」のために最初にディレクターズ・チェアに座った時点で、この安定した映画スターが映画制作者の間でも象徴になるとは、イーストウッド自身も含め誰も予測出来なかっただろう。 イーストウッドは、「荒野のストレンジャー」、「アウトロー」、「ブロンコ・ビリー」、 「ペイルライダー」、そして1992年のアカデミー賞最優秀作品賞を獲得した「許されざる者」 の俳優兼監督として西部劇を征服し続けてきた。
しかし、さらに彼は、チャーリー・パーカーの伝記映画「バード」、 「アフリカの女王」の撮影現場でのジョン・ヒューストンを演じた 「ホワイト・ハンター ブラックハート」、ポピュラーなラブ・ストーリー 「マディソン郡の橋」、そして「軍事衛星を解除する老宇宙飛行士の冒険談 「スペース・カウボーイ」 など、多様なプロジェクトで成功をおさめてきた。
昨年、イーストウッドは、幼年期のトラウマによって傷跡を残された3人の友人 の熱い物語「ミスティック・リバー」でアカデミー賞の2度目の監督賞ノミネート を受け、ショーン・ペンとティム・ロビンスはオスカーを獲得した。


「ミスティック・リバー」の後、74歳のイーストウッドが彼の技能のピークにあるというこ とに、何か疑問があったなら、現在、限定公開中の彼の新しいワーナー・ブラザース作品 "Million Dollar Baby" をすぐに見てほしい。
イーストウッド自身は、自分の娘から長年疎遠にされているために苦悩している、ベテランのボクシング・トレーナー兼マネージャー、フランキー・ダン役で、「許されざる者」に次いで彼の2番目の最優秀男優賞のノミネートを受ける用意ができているように思える。 フランキーの人生は、トレーラー住まいの貧乏生活からボクサーを目指し彼を師匠にする と決心した、マギー・フィッツジェラルド(また賞を受けるにふさわしい演技を見せる オスカー受賞者のヒラリー・スワンク)に出会うことで劇的に変わる。
偉大なモーガン・フリーマンは、フランキーのジムを管理している親切な元ボクサー、 スクラップという主要な役を完成させている。
Ｆ・Ｘ・トゥールの賞賛された短編小説集 "Rope Burns" 中の一編を、 エミー賞ライターであるポール・ハギス（テレビ・シリーズ "EZ Streets" ）によって 脚色された "MDB" は、少なくとも、その途中で1つの破壊的なノックアウト・ブロー がある状態で、 ボクシング・サブカルチャーと痛切な人物描写という趣のある様相 を呈している。
また、「ミスティック・リバー」同様、この俳優・製作者・監督は映画の 管弦楽スコアを作曲した。


イーストウッドは、ハギスと共に脚色を発展させた共同製作者のアルバート・Ｓ・ルデ ィから、最初に脚本を渡された。
「うれしい驚きだったね。ポールはもう少しで脚本から降りるところだったから」とイ ーストウッドははっきりそう語った。
「同時に、トゥールは利用できる素晴らしいアイデアを持ってたんだ」


最初のうちスタジオは、その企画を無視していた。イーストウッドは思い出す。


「続編とリメイク流行りのこの時代に、それをやるべきだと皆を納得させることに苦労した点で、連続した2作品（「ミスティック〜」と）の1本のように思われたね。でも、最終的にワーナー・ブラザースは、我々の方で制作費の半分を持つこと、その金だけで、それ以上使わないことを提案したことで、“どうぞ、映画を作って下さい”と言ったんだ。そうして私は作ったんだ」


観客は、彼の長いキャリアで最も素晴らしい、イーストウッドの演技の感情の激しさに驚かされるかもしれない。


「私は、そこでどうするかを求められる役割の必要性と、そのキャラクターが陥る 道徳的なジレンマを考えている」と、彼は語る。
「言わば、彼は究極のテストに置かれるんだ」


フランキーと彼の疎遠になった娘のあいだの関係をイーストウッドは指摘する。

「どちらかと言えば、わざとあいまいにしておいた。だから、そこで観客は自分で 描かなくてはならない。明らかなのは、若い頃に不愉快な離婚があったに違いないとい う彼の背景や、たぶんその娘は今40代ぐらいで、彼は関係を確立することはできないと いうことだ。そして彼は、この若い女性との間にこの関係を見つける。それは父娘の 物語のようになっていくんだ」


しかし、その関係は、苦労して勝ち取ったものである。


「同時に、彼は自分の信仰や霊感に関して疑問を抱いている。それらのすべて の要素が彼に困難を乗り越えるためのとてつもないハードルを与えるんだ。彼は 、友人のスクラップ以外との関係を確立したがっている人であるようには思えない・・・ オンボロのジムにいる二人のジイ様だ。人々を最も見抜いているスクラップに対して、 フランキーはもうちょっとシニカルだね」


フランキーのように、イーストウッドは共演者スワンクに対して健全な敬意を育んだ。



「最初に彼女に会った時は、少しスリムじゃないかなと思ったよ。でも、ヘビーなウエイト・リフティングやボクシングのトレーニングで、彼女を増量させたんだ。彼女には18か19ポンドぐらい付けさせたかな。彼女は素晴らしい職業観を持ってるよ。この４ヶ月、仕事をしてきたが、彼女はトレーニングを始めてから、私が想像できる中で最も勤勉な人間だった。 そして、作品を見れば明らかだが、・・・彼女は完全に自分をいじめていた。 彼女は活気あふれるスターの卵のようには見えない、背景の中で飛び回るパリス・ヒルトンではないんだ。たぶん彼女は多くの女性のボクサーと上手く戦えるだろうね。


「許されざる者」でも共演している、フリーマンに関してイーストウッドは語る。


「彼は素晴らしいよ。モーガンは一緒に働くと面白くて、楽な男たちののひとりなんだ。それはまさに素晴らしい喜びといえるね。 彼の演技は一貫して良いから、たいてい人々はそれを当然だと思っている。彼はよく準備してくるから、とても簡単にこなしてしまうんだよ」


さらにイーストウッドには、「アラバマ物語」や「スティング」でオスカーを受賞し、89歳にしてまだ精力的に活動し続けている、注目すべきプロダクション・デザイナー、ヘンリー・バムステッドと一緒にいることで気取らない快適な状態を有するのである。 本作はイーストウッドのマルパソ・プロダクションにおけるバムステッドの9度目の作品である。


「バミーは堅実な都会人さ、いつもそうだった。彼は素晴らしいよ。彼は私が求めるものを理解している。本当にとても鋭いんだ。彼ぐらいの年令の男には、驚くべきことだよ。彼の聴力は非の打ちどころがなく、視覚も広い。そして飲み込みが早いんだ。私は本当に彼を非常に重んじている。そして、彼がまだ働きたがっているのがただうれしいんだ。私は彼が100歳になるまで彼を使うつもりだよ」


現在、映画監督として40年間過ごしてきたイーストウッドは、「恐怖のメロディ」でデビューした時には、そんなに長くのキャリアを決して予見していなかったと語る。


「『恐怖のメロディ』を監督したいとは考えていた。そしてドン・シーゲルは（出演作品、5作の映画監督）はいつも励ましてくれていた。---　彼はいつも私が監督をやるべきであると感じていて、特定の企画で、遠慮はせずにすぐにとりかかれと私を激励してくれたんだ。私はそれがどこへ私を導いたのかはわからなかったが、いつの日か、私はたぶんこれ以上俳優ではいたくないと思うだろうことはわかっていた。そして、私は常にカメラの後ろにいられるかもしれないと考えていた」


それでは、何故イーストウッドは、ただ生き残るだけではなく、うまく行ったのだろうか?


「そのような考えは少しも持ってないな。私は単に活動し続けてきたようなものだよ。そうすることに何か秘訣があるとすれば、学ぶことを決して止めないことかな。人はあらゆる映画で何か新しいものを学ぶんだ。私はただ着実に前進するだけだ。衝動を抑えたいとは思わない。自分自身を繰り返さねばならないとは思わないんだ。後戻りして、20年、30年前に作った作品をやるつもりはないからね。人がある役を演じるなら、自分に似合う、自分の年齢に合った役を演じたほうがよい」


「ハリウッドに住み、夢の世界に生きていると、時々、人は世界から連絡が絶えることがある。 しかし、挑戦的でおもしろい話を得ようと試み続けるなら、それは老いることの素晴らしい利点だよ。 人には今まで触れてきたあらゆる経験があるのだから。 重要なことは発展し続けることで、そうでなければ人は衰えるだろう。それはちょっと運動に似ているね　---　運動することを止めると取り戻すのは非常に難しくなる。 精神もそれと似ているんだ。 心を鍛えることを止めれば、再びそれが活気づくのは非常に難しいよ」


イーストウッドは、ほとんどが予算内で、そしてスケジュールより早く仕上げる、倹約的な監督として知られている。


「私は評判ほど早くはないよ」とイーストウッドは強調する。 「それは、ただ自分がやるべき時にやるべきことを分かっているからなんだ。進めることを恐れてはいない、それが結果として得られるであろうからね」


「私がドン・シーゲルから学んだ1つのことは、人はいつもそれに挑戦しているということだ。数年間、私が時々人々が多くの異なった人々と仕事をしてきた数年間に気づいたことは、時々、人々はくだらないことばかりして時間を潰しているということだ。映画監督たちは、あるシークエンスで自信を持つことを自分に説得しようとしているんだ。だから彼らは、飛込台として俳優を使用するのさ。しかし、ドンの場合、彼はいつも非常に早い時間でそれを試みていた。 私はさらにその度を越してきた。リハーサルさえもしないという点までだ。---　私はカメラを回しながらリハーサルをするんだ」


「ひとりの俳優として挑戦しようとする基本的なことは、今まで一度も考えられたことや、言われたことがないように思えるあらゆることを成功させることだ。だから私は時々考えるんだ：やってみようじゃないかと。確かにいつもその通りには働いてはいない。カバレッジ（同一場面を複数のカメラを使用して、様々な角度から撮る方法）をしなくてはいけない時だってある。しかし、（すぐに）それに挑戦するなら、俳優は常に積極的であり、自分のキャラクターの中へ入り込まなくてはならないんだ。私自身の場合もそうだ。---　私は熟慮し、そのキャラクターでいなくてはならない。もし、人がそうするのなら、他のすべてのことがそれ自体に注意するだろう」


監督の次回作品は、ジェームス・ブラッドリーのベストセラー小説が原作で、硫黄島に星条旗を掲げた彼の父親と他の5人の男たちを描いた、ドリーム・ワークスの企画 "Flags of Our Fathers" である。


「これらの人々が経験したことを理解することは、アメリカにとって良いことだ。 なぜなら、彼らは皆子供だったんだ　---　彼らの平均年齢は19歳だった」と、彼は語る。 製作は2005年の晩夏か初秋に始まるだろう。


ジャンルを確立させた不可欠の貢献者のひとりとして、イーストウッドはいつか、また別の西部劇を作るのだろうか?


「御存知の通り、人々はいつもそれを尋ねる。でも本当に答えられないんだ。『許されざる者』を作ったときも、私はそれが最後の作品にするつもりだと常に感じていた。それを作った10年前の1982年に脚本を買った。その時に感じたんだ。・・・これは私にとって、完璧な西部劇になるだろう、いわば決定打のようなものだと。現在は、引退せずにがんばる男たちのひとりになるつもりはないが、誰かが独創的な脚本を出して、それが面白いものだったら、私は確実に決してやらないとは言わないよ。 残念ながら、映画のビジネスにおけるあらゆる事が、一時的な流行によって定められているから、人々は多くの西部劇を作ることもないし、その結果、誰も脚本を書かないんだ」


彼の新しい作品はオスカーの噂を引き起こしているが、イーストウッドはその熱狂に巻き込まれることを拒んでいる。


「ひとつの作品を作るときは、人は出来る限りベストを尽くすだろう。作品を仕上げたときに、私はこう言ってるんだ。『これは私が意図したものだ。だからそれはそこにある』、ある時点で、人はフィルムを引き渡してこう言わなければならない『ＯＫ、それだよ』と。今、それを取り出して公開して、観客は、それを見て気に入るか、嫌うかのどちらかだろう。そして、人がそれについて出来ることは何もないよ。私は何も関係ないね。映画を製作していられること、そしてそれを楽しめることがただうれしいだけさ」

2005　/　02　/　不明

*****　注意！　ネタばれあります　*****

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Clint Eastwood has become the darling of Hollywood, with back-to-back Oscar nominated films.


Clint Eastwood defends his 'Million Dollar Baby'


オスカー候補作品を連発する、ハリウッドの寵児となったイーストウッドが、「ミリオンダラー・ベイビー」を弁護する。


文：GLENN WHIPP



（※　冒頭部は簡単なキャリア紹介、ＭＤＢのストーリー紹介につき、省略）


今回、イーストウッドはその質問に答え、物語を伝えることと擁護の違い、何故、 引退の計画を延期して、ＭＤＢに出演したか、等、他のいろいろな話題について語ってくれる。





Ｑ：あなたは、人々の課題に合う方法で、自分の映画を解釈させることを良く知っている ・・・。


それはよいことだ。それがあるべき方法だよ。人々は言いたいことを言えるんだ。


Ｑ：しかし、「ミリオンダラー・ベイビー」では、物語を伝えることと、いわゆる “安楽死賛成の問題”を擁護することの境界線を越えてしまったと感じる人もいますが。


さあ、どうかな。
私はサンフランシスコの大通りで、何度も44マグナムを撃ってきたが、私はそれを実際に 擁護はしなかった。
しかしその当時は、あなたは「ダーティハリー」シリーズで、明確にそれをしている、と言う 人もいた。
彼らは、私が自警団主義を擁護していると言ったが、それはある見解を持つただの一人の男だった。 それは物語であって、ある警察官のファンタジーなんだ。
しかし多くの警察官たちはその通りには行動していない。そして、幸いにもその通りには行動出来ないんだ。


Ｑ：人々の中には、フランキーが選択するせいで、この映画がこれがそうすべき方法であると語っていると考える者もいますが。


まず最初に、フランキーはマギーに言う。「　絶対にダメだ。そんな風に考えることさえするな」と。 それが彼の最初の反応だ。だが、やがてそれは作品の難しい本質となる。
そしてそれは、ドラマが誕生した時から、シェークスピア劇やギリシア悲劇などにかか わらず、ドラマを作ってきたものなんだ。
人は、楽な道のりのドラマを経験することは出来ない。葛藤のないドラマを経験する方法などないんだ。そしてこれは、非常に矛盾している物語であり、とても悲しく、感動的な物語だ。


Ｑ：第一に映画を作りたいと考えた理由はまさしくそれでしょうか？


私は原作を読んで、猛烈に心を動かされた。そして映画化出来れば、素晴らしいものになるだろうと考えたんだ。 最初に話していたことに戻ってしまうが・・・すべてのことは推測にすぎない。
もし私がマギーの状況に直面したら、どうするかはわからない。たぶん同じような結果にはならないだろう。 実際、私はそうはならないだろうとかなり確信している。
でも知っている者は誰もいない。


もし駐車場で男が自分の顔に銃を突きつけてきたら自分ならどうするかということを 誰もが推測する。 ひょっとすると自分はジョン・ウェインになって、銃を取り上げるかもしれないと空想 しそうだ。 しかし、恐らく自分の宝石類を全部外して、地面に置くだろう。
もう一度言うが、人は、物事が起こるまでは、どう反応するかはわからないものだよ。


それは、妊娠中絶合法化に賛成する人や反対派がいることと同じことだ。
人々は、そのような立場におかれたことはなく、その状況がどういうものかをわかっていない、多くのコメントをしている。 人はそのような特定のジレンマに関して100万の話が出来るんだ。
しかし、ちょうどその時に、我々は、非常に性急に正しい判断を下そうとする傾向がある。 そして、人に同意しない者は、ほとんど敵のようになるんだ。





Q:政治的なことですが、最近の議論は曖昧なことに多くの余地を残しておきません。 それは、白か黒か、赤か青です。


君の言うことは全く正しいと思うよ。 人々はもう物事の賛否両論の議論をすることができないんだ。 現在では、他の人に同意しない者は皆、馬鹿になってしまうんだ。国の政治と何人かの人々にそれが認められるよ。----　彼らは灰色の部分を少しも残してはおかないんだ。


Ｑ：そういう部分は、探求するアーティストにとっては最も興味深い領域ですね。


その通りだよ。
私はラジオでこういう奴らの何人かの話を聞くが、人は各方面でこういう人々を見る機会がある。 そしてあちこちで吐かれる毒液は、本当に途方もない量だ。
この数年間を思い出しても、そんな風には思わなかった。
しかし、物事がどうあったかについては、私は郷愁的であるか、忘れっぽいんだ。





Ｑ：あなたは常に罪の意識と責任というテーマを扱っています。
最近の2作品「ミスティック・リバー」と「ミリオンダラー・ベイビー」は、カトリックというプリズムを通してこれらの物事に取り組んできました。 教会でのあなたのセリフにおいて、何らかの関心事を伝えているのでしょうか？


それはただの偶然の一致だよ。
「ミスティック・リバー」は、舞台がアイリッシュ・カトリックの区域だったからだ。
今回も、教会のジレンマを描いたわけではない。
主人公は、自分の人生における失望感に関する問題を抱えていて、司祭に敵意あるように振る舞うが、まだミサには参列している。 彼は今も苦しんでいる。彼はそれに関してちょっと冷笑的になっていただけだ。
そして、司祭は立派な男だ。いざという時には、そしてフランキーが本当に慰めを必要とすると 彼は結局、司祭の元に戻ることになる。


そして、司祭は彼女を殺さないように彼に語る。彼は言う、
「もしあなたがこれを行えば、 二度と自分自身を探せないほど深くどこかでさまようであろう」と。
彼が言うことは感情的であって霊的だが、教会の教義ではない。 それはありふれた 弁論術を越えている。
司祭は、フランキーがこれをやり抜くならば、永遠に心理的にダメージを受けるだろう と彼に説いているんだ。





Ｑ：司祭は、フランキーが払うであろう代償をうまく取り繕ってはいません。
そのことが、誰もがこの映画は安楽死を美化している、擁護していると考えるだろう とは考えにくい理由です。


手助けをしているのが他人であるケヴォーキアン博士の場合とは違う。
（注：米国で安楽死を主張している人物）
フランキーは、マギーを愛している。彼は利己的な理由のために、彼女が生きることを望んでいる。しかし、彼女は死にたがっている。それは葛藤なんだ。


Ｑ：あなたは、最後にフランキーはどうなると思いますか？


私たちは、彼が司祭が予言する地獄に落ちた魂になるのか、あるいは、先に進んでどこ かに存在を持つのかはわからない。
作品全体の本質であるとわかる、モーガン・フリーマンの手紙はそれを明らかにしない。
私たちは、ただ彼がどこかで何らかの平和を見つけたことを願っているだけだ。


Ｑ：それは胸の張り裂ける思いですね。私が思うに、あなたがこのキャラクターを演じているということで、より一層そう感じます。 観客は、一緒にあなたを見てきたという経歴を映画にもたらします。 「許されざる者」以来、あなたは、人々が覚えているあなたの象徴的なイメージを捨てて --- それは自発的に --- 年相応に演じることが可能になってきました。


年齢を重ねるということは、何かにとって有益であるべきだよ。 私は長い間、半世紀以上も演じてきて、わかっている。
人は70代に入ってしまえば、時間はどんどん過ぎ去る。知識や経験があるなら、それを 有効に使おうとするだろう。
やがては若い誰かに自由に遊ばせておけばいいんだ。





Ｑ：あなたは素晴らしい映画監督として仕事をしているのは明らかですが、 演技部門でオスカー候補になったことは、やはり、うれしい驚きとなりましたか？


（笑）ああ、うれしいね。気分が良いよ。演技部門でノミネートされることに飽き飽きし てるなんて私は言えないからね。
私は、時に注意を引き付ける、資質を大いに見せびらかすような演技はしてこなかった。
私は、キャラクターには自分自身に他人よりも深く達することが必要である、と考えている。
そして私は、今回の役に出来る限り没頭して同化したんだ。





Ｑ：さて、現在は、硫黄島で星条旗を掲げた男たちを描く "Flags of Our Fathers" を監督することになっていますね。 この題材にあなたが惹かれたものは？


私は、常に第二次世界大戦におけるこの復員兵たちに好奇心があったんだ。
これらの人々はたくさんの経験をした。帰国後に・・・この男たちのうち2人は異なる理由のために、 完全に人生を破滅させられていた。
仲間の1人はなんとか自分の人生を正常な状態にすることができた。しかし彼は自分の体験を、3人の子供たちや47年連れ添った妻にも決して話そうとはしなかった。 その後死ぬまで、1週間に1度か2度は真夜中に目覚めて泣いていた理由について、話したがらなかったんだ。


Ｑ：またも暗く、苛酷なドラマのように聞こえますが。


最近は、そういう企画を選んでいるせいで、マゾヒズムの傾向になってきているね。（笑）





Ｑ：今度も授賞式に母親を連れて行くおつもりですか？


母は1993年の授賞式に一緒に来て、去年は妻のダイナと一緒だった。
彼女がそれを楽しんでるようなら、連れて行きたいな。
先日、母の96歳の誕生日を祝ったばかりなんだ。彼女は本当によくがんばっているよ。


Ｑ：あなたもお元気ですね。


そうだね、ありがとう。みんなが私を拒否するまでは働き続けるつもりだよ。

2005　/　02　/　10

以下は米「ＴＩＭＥ」誌（2月20日号）に掲載されたインタビューからの抜粋です。


聞き手は、イーストウッドと親しい伝記作家で、「許されざる者」や「ミスティック・リバー」ＤＶＤ のオーディオ・コメンタリーを務めている、リチャード・シッケル氏です。

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How Lucky Does He Feel





クリント・イーストウッドの25本目の監督作品は、アカデミー賞の7部門で候補に上がっている。
オスカーの有力候補である74歳のイーストウッドは、映画製作、金、そし て飲み込みが悪い人間でいることの優位性について、伝記作家であり、彼の長年の友人で、 さらにタイム誌の映画評論家でもあるリチャード・シッケルとじっくりと腰を据えて語った。


ＲＳ：　「ミリオンダラー・ベイビー」をどのように見つけたのですか?


ＣＥ：　原作を読んだんだ。（製作者の）アル・ルディに小説 "Rope Burns" を渡された。 4年前の事だ。彼は、ボクシングとその周辺を舞台にした素晴らしい物語を書いてい たＦ・Ｘ・トゥールとは話したことがあると言っていたよ。
そこで本を読んでみると、私は特に「ミリオンダラー・ベイビー」が気に入ったんだ。
映画化は比較的簡単だろうと思った。「ミスティック・リバー」も十分手ごろな値段で済 んだしね。
そこで私はワーナー・ブラザースに行くと、彼らは言うんだ、 「今時、ボクシング映画は儲からないと思うね」と。
私は「そうかい、私はこれをボクシング映画とは考えていない」と言ったよ。 それは代理の父親と代理の娘との間のラブストーリーであり、次の映画はこれでいく つもりであることを彼らに告げた。
それで私たちは他のスタジオにその企画を売りに出かけたが、2、3社ぐらいに断られたよ。 彼らは皆、題材は面白いが儲からないと考えていたんだ。


ＲＳ：　私は脚本を読みましたが、ストーリーが暗い展開になり始めて、仰天しました。 私はそれが人々に興味を持たせるだろうと考えましたが。


ＣＥ：　私も、そう考えたよ。それはいわば、人に左フックを見舞うようなものだからね。 でも、それに夢中になるような人はいなかった。
レイクショア・エンターテインメントは常に乗り気だったが、制作費を全部持つ余裕は なかった。
そこで我々が相談していると、ワーナーが再び連絡してきて、半分は引き受けると言った。 その半分とは1500万ドルだった。
御存知の通り、現在の相場じゃ、1500万ドルでは多くの人を雇えないが、レイクショアは残りの分を調達してくれたんだ。海外の配給権としてね。 そんなわけで、私たちは製作を続け、ひっそりとそれを作った。
私たちが映画を作っていることは誰も知らなかったし、関心を持つ者もいなかったよ。


ＲＳ：　あなたは、それが“論争の的“になると想像してましたか？


ＣＥ：　全くわからなかったね。
人々がおおっぴらに映画の結末を議論し始めるまでに広まったことに、とても驚いたよ。


ＲＳ：　クリント・イーストウッド、偉大なアメリカの象徴はどうしたわけか、 この映画で彼の支持者の重要な一部を失望させたという説がありますが。


ＣＥ：　そうだね、それにはかなり笑わせてもらったよ。そう言う人たちはいつも "Hollyweird" について文句を言ってるね。今回の映画にもすぐ文句をつけ始めているよ。 「パッション」が（アカデミー賞の）メーキャップ賞や他のいくつかのマイナーな部門でしか、候補に上がらなかったことが原因で、彼らは皆それほど狂ってしまったのかな？ 過激主義（or 極端論？）は、とても安易だ。人には自分の立場がある。それ以上どうしようもない。 それは、あまり気にかけることじゃないね。 右側に必要なだけ進めば、左から同じようにやって来る馬鹿に会うのさ。





ＲＳ：　あなたの全作品を顧みると、私にとってはそのどれもが奇妙なある特性を もっているのです。
それらの作品が常に、ある問題を非・イデオロギー的に処理している人々を扱っていると 思っているからです。


ＣＥ：　私は、「おや、哲学的に、この男に同感して間違いない。これは私だ」と言って、 今まで映画を作ってきたことはないと思ってるよ。
私には、それは自分じゃないという役を選ぶ傾向がより多くあると思っている。
例えば「ダーティハリー」を思い出して欲しい。人々はハリーをただの凶暴な警官である とみなした。
しかし、彼は妻を失ったばかりの凶暴な警官なんだ。 彼はいわば悲しい男だ。そして、サディスティックな精神異常の連続殺人犯を逮捕し ようとしている間、彼が留まっている官僚主義の悪夢によって悲しみ、怒るんだ。
彼がまったく問題を持たない、のんきな奴として描かれていたら、 映画に感情移入することはないだろう。


ＲＳ：あなたが「ダーティハリー」の話を持ち出しているのは、興味深いですね、 なぜなら、その前の作品では、イデオロギー的に問題のある完全な悪党に加わって いたからです。---左翼思想にならっていたあの時代に。


ＣＥ：なぜなら、彼はミランダ権の強要について意見を述べているからだ。 しかし、あの映画はミランダ権の強要を判断しているわけではない。 私が個人的に被告人の権利を没収することを支持しているという意味ではないんだ。





ＲＳ：私たちは皆、いくつかの点で不可解な運命によって操られていると思いますか？


ＣＥ：ああ、時にはね。不可避の事態というものは、その理由が何かを知っている者 のために、ちょうど起こるようになっていると、時々考えるんだ。 つまり、私は15歳の時の自分自身を思い出しているんだ。
私は物覚えが悪くてね。今では、そういった子供たちは、ADD（注意欠陥障害）とか、 全てにそれぞれ特徴のある症候群にかかっていると言われるようだが、 私が子供の頃は、そのような名称は何もなかった。 「イーストウッド夫人、あなたの息子さんは、ちょっと飲み込みが悪いですね」と 言われるだけだった。 私は、どこにでもいる劣等生のために戦っているんだよ。 私は自分の車輪を回転させるのに時間がかかるのさ。 74歳になってもまだ回転していられるのはそれが理由だと思ってるよ。





ＲＳ：あなたには長い下積み時代があった。----「ローハイド」、それからマカロニ・ウエスタンで仕事をしていた数年間は。そのことはあなたにとって良かったと思いますか？ 一夜にしてスターになることは、精神状態に有害となる場合がありますね。


ＣＥ：ああ、それは多くの人々を破滅させてきた。オーソン・ウエルズのようにね。
彼は、誰もがノックアウトされるプロジェクトで、既成の枠を取り外すことに成功すると、 その後、突然に、“私はそれに倣うために何をしたらよいのだろうか？”みたいな感 じになってしまった。


ＲＳ：あなたの作品を振り返ると、それらに登場する誰もが基本的に労働階級の人物ですね。


ＣＥ：ああ、そうだね。そういう役に引きつけられてきたと思うよ。
そして、もし少しでも私に何らかの理解があるなら、多分、それはその領域にある。



ＲＳ：私は、昔の西部の神話を復活させようという自分の夢を持った靴屋の店員、 「ブロンコ・ビリー」のことを考えるんですよね。
それは、ヒラリースワンク演じるキャラクターも同じですね。違いますか？


ＣＥ：その通りだよ。過度に下品になることなく、それは「ブロンコ・ビリー」と この映画の間を結びつけるものだ。





ＲＳ：私は、人々が、「やれやれ、クリントは彼が演出している時は、多くの指示を 出しているようには思えないね」と言うのを実際に聞きましたが。


ＣＥ：役者は時に非常に自意識過剰になることがある。
彼らは、自分の知らない人々の前に出て行き、状況を無視して馬鹿馬鹿しいようなこと を演じ始めなければならない。 そして、非常に経験豊かな者でさえ、現場での最初の数日間は、ある程度の不安が生ずるんだ。 そのうえ、、監督は多くのいらだちを口に出すだけで、時には邪魔になってしまう場合がある。 ほとんどの時間、彼らは自分の不安を補っている。そして誰もがその脚本が何を描い ているのかを本当に理解しているから、威張らないでいられる。さもなければ、 彼らはそこにいないだろう。
だから、ちょうど私は、パーティでの親切なホストとして存在しているんだ。
彼らを非常に快適にさせれば、消耗させずに、ある一定の態度にさせれば、彼らは、準備を整え、自分自身を愚弄することが出来て、自分は愚かであると本当に思うことはなくなるよ。 わたしはそういうやり方が好きなんだ。





ＲＳ：あなたの作品は、昔の映画に回帰していると思いますか？


ＣＥ：おや、それは驚きだ。そうだとしたら、光栄だね。
でも、君がそういう風に考えているから、そう見てしまうんじゃないかな。
別な人は違った角度で見るかもしれないと思うよ。多分、若い監督だって違ったアプロー チをしてるだろうね。
そこで、アレキサンダー・ペイン（「サイドウェイ」、「アバウト・シュミット」の監督） がいる。 彼は若い奴だが、自分の映画にある領域を持っている。それはやや古風な作りだね。


ＲＳ：　あなたがペインの仕事を引き合いに出すとは面白いですね。
なぜなら、今年のオスカー・レースでは、実際、スケールの点で他のどれよりも、あなたの作品に近いわけですから。


ＣＥ：　そうだね。彼はある基準を持った小さな物語を伝えている。
冒頭のショットでほとんどを語っているような物語は安易になるはずだ。 しかし、彼は、映画の手ざわりがあるものを作っている、テレビでも見ることが出来るもの じゃないんだ。単なるＭＴＶのようなたれ流し映像とは違うね。 それは別にＭＴＶに何か間違ってる点があると言ってるわけじゃない。
思うに・・・、そうだな、私にとっては、脳を疲れさせるものがあるんだ。 ただひたすら映像が切り替わるだけのポップ・カルチャーを経験していると、何か他のものを見る機会を得たいと思わなくなるんじゃないかな。





ＲＳ：　最近の２作品で制作費を得ることに苦心するといったトラブルがありながら、あなたは、生涯の最後まで自分のやりたいことを続けることが、多分出来るだろうと考えていますよね？


ＣＥ：　そうだな、そう願うよ。出来ない場合はそれは、ここから急いで出て行けという 重大な暗示になるだろうから。 でも、次に撮る予定の映画は("Flags of Our Fathers") 、ちょっとだけ、これまでの作品よりも広い領域を持っていると考えているんだ。 1945年から1996年まで前後にストーリーが飛び交うし、それぞれ違う世代の人々を描くからね。 そこには、第二次大戦を戦った男たちの世代、さらに彼らの家族の世代の人間がいて、アメリカに戻され英雄として扱われた時に、彼らは皆、騙されていたという衝撃がある。---　英雄的な行動をしたとは思っていないのに、英雄として祭りあげられることにはぞっとするものがあるよ。


ＲＳ：　これは馬鹿らしく思えるでしょうが、大目にみて下さい。 それって映画スターの存在に何か似ていませんか?


ＣＥ：　映画で演じることに関しては、そうと言えるね。
時々人々は、役者にはその人が持ってるもの以上の何かがあると期待してしまうんだ。
実際には、自分が学んだいくつかの技術を活かして、ただ仕事をしているに過ぎないんだが、 それは多くの人々を破滅させてきた。
マーロン・ブランドのような誰かを才能豊かで並みはずれていると語りながら、 彼の全人生を破滅させるんだ。---　急に、この1930年代の男は馬鹿みたいだとね。
しかし、わかる通り、人は人生において、なりたい者になると落ち着いてそれを考えないものだ。 ただ前に進んで、それをやるだけだよ。
何人かの人々を楽しませたら、それは素晴らしいことだ。---　再びそうすることを望んでしまう。 でも「マイ・ウェイ」を歌うフランク・シナトラのように思われたくはないのさ。





ＲＳ：あなたは、世界の、最も高齢であり現役である有名人のひとりですね。あなたはどのように、その落とし穴を避けてましたか?


ＣＥ：私は偉大な自己アナリストではないが、唯一の秘訣は、ただ新しいものに興味を持って、どんどん進んでいくことに関心があるだけだよ。 常に発展しようと努力してきたと考えている。私は、働き続けて来た、学び続けて来たんだ。
そうだな、例えば、人は粘土か何かのを1片を取っておく。 人はただそれをこねて、形を作り続けなければならない。そして、うまくいけば、それはどんどん良くなる。私は現在、20、30、40、50年前の自分よりも良い人間であると思いたい。 よくはわからない、でも、当時の私は、現在とは異なる性格を持っていたのは確かだ。



ＲＳ：　なるほど、私はあなたが、すぐかっとなることが少なくなったと思いますが。


ＣＥ：　ああ、そうさ、その通り。そうだとも。


ＲＳ：　ちょっとだけ寛容になったとか。


ＣＥ：　うん。非能率的なこと、そうすべき方向に向かっていないことに対しては、ひどく 我慢ならなかったものだ。
今は、そこに座り、少し考えてから「よし、ＯＫだ。わたしはちょうどこのまま続ける つもりだ」って感じかな。





ＲＳ：　以前、あなたのファンがちょっと手に負えなくなったとき、私はあなたと一緒にいました。あなたはこう言いましたね、「わかった。君がサインする時、君は(その契約)全てに乗らなければならないよ」と。それについてちょっとだけ話してくれますか？


（ ※ 注：ここは具体的にどういう背景か不明ですが、推察するに、あるファンが、マルパソで働きたい、彼にとしつこくせがんだことだと思われます・・・）





ＣＥ：　わかるだろうが、それは単なる牛追いの思想だよ。
私は、“誰でも人生で15分間は有名になれる”という言葉を信じている役者たちを、よく解雇したものだった。 彼はこう言い始めるのさ。 「なんてこったい、これには我慢ならない。それは本当に好きではない。私はただ役者でありたかっただけなんだ。私は実際には成功したくなかったと」と。 そしてこう言う、「もう、よしてくれ。いったい誰が雄牛に挑戦するっていうんだ？」と。 働いている人々だけが成功するんだよ。






ＲＳ：　私には、役者に起こる物事のうちのひとつは、名声が自分を自分の根源から切り離す ということのように思えます。


ＣＥ：　そうだね。誰もが中を見ていれば、外側は見えないものだ。





ＲＳ：　私生活が明らかにされている点で、あなたにはまだ羨ましい何かがありますね。 今は映画について話してはいませんが・・・。


ＣＥ：　君の言いたいことはわかるよ。私は幸運だった。人は幸運であるべきだよ。 私はカーメルのこの場所で、自身のための生活をちょっとだけ築いた。 そして、妻のダイナと偶然出会ったことが幸運だった。 彼女は私の人生をそれほど充実させてくれた。私の家族を呼び集めてくれたんだ。 私は、自分一人じゃそうすることができたかどうかはわからないが、彼女は、バラバラだった家族を全てまとめるのに尽くしてくれた。





ＲＳ：　では最後に、どのようにオスカー像に触りますか？　つまりあなたは何度か経験あるわけですが。


ＣＥ：　まあ、欲しいものを手に入れることは時にはあるだろう。
「許されざる者」の時は、我々はちょっとだけ好意を持たれていた。そしてうまくいった。 少なくとも、受賞するには最も魅力的な、最優秀作品賞のようにね。
それから（「ミスティック・リバー」で参加した）去年は、我々はホビット化されてしまった。
今はほら、2年連続して戻ったよ。　ほとんど離れて行こうとしない子供のようだね。
多分彼らは、すぐに追い払いたいからオスカーを渡してくれるんじゃないかな。

2005　/　02　/　13

*****　注意！　ネタばれあります　*****



以下は、アカデミー授賞式直前の2月25日、米ＦＯＸテレビの番組 "The O'Reilly Factor"　に 出演した時のコメントからです。


実際にはもっと多くの応答がありますが、本作の関連している部分と興味深い部分を 抜粋して構成しています。

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ビル・オライリー（ホスト）：
「ミリオンダラー・ベイビー」は良い映画でした。
私たちは数週間前にもこの番組で討論しましたね。
私は、自分が本作をかなり気に入ったことを観客に話しました。
しかし、あなたが作品でどんなメッセージを伝えたかったかを知りたいです。


イーストウッド：
そうだなあ、人がＦ・Ｘ・トゥールの原作小説に最初に触れる場合、それはボクシング の物語としてだろう。 ---　彼は短編集という形で書いたわけだが、この作品は実際にはラブ・ストーリーなんだ。---　ボクシングの内外を舞台にしているけどね。だから、彼の全ての物語もそんな風なんだ。たいていはその下で冒険に満ちた物語があるのだが、これは父と娘の間のラブ・ストーリーだった。 父は決して関係を持つことのない娘の姿を探して、彼女は失った最愛の父親の姿を探していた。


オライリー：
努力している若い女性に愛着を覚えた代理父ということですね。
だから、あなたにとっては、よりその関係を強調した作品であり、それが本作 での主要な焦点だったと。


イーストウッド：その通り


オライリー：
そして、その後は、安楽死という議論を呼ぶ作品へと発展していくわけですが、 それはあなたを驚かせましたか？


イーストウッド：
う〜ん、驚くことはなかったかな。
ひょっとすると論議を呼ぶかもしれないとは思ったけど、その論議がどういうものなのか はわからなかった。
それはそういう感じものじゃなかった。何かに対してメッセージがあるというものではないんだよ。


でも最近は、・・・昔は、誰もが予想通りの反応を示すリベラルの連中について語ったものだが・・・ 今じゃ、お決まりの行動を取る保守主義者グループがちょっといるだろう・・・ 何でも政治化しようとする人たちがね。


しかし、それは政治映画ではないんだ。それは単に関係を描いた作品で、思いがけない出 来事なだけだ。
何か賛成したり反対したりしてるわけじゃない。物語を終える手段として起こってい るだけなんだ。


オライリー：
なるほど、あなたはまた、公正にそれをしてバランスをとりました。
私は、映画の鍵となる部分であなたが描いた聖職者は、とてもとても明晰な方法で この問題に対してアドバイスしているように思えます。つまり、彼はその両側を提示しました。 そして、それはあなたが観衆のためにすることができる全てです。
私の見たところでは、あなたは誰も洗脳しようとしていませんでした。


イーストウッド：
いいや、実際のところ、聖職者は正しいよ。
彼は主人公に向かって、こう言う。 君がこの事をすれば、あなたは深いどこかで失われる、あなたの中で永遠に、とね。
彼は、完全に正しいよ。


オライリー：そうですか。
さて、私は多くの異なる水準の上で映画を楽しんできました。 それは娯楽的で、また聡明な作品です。
しかし、面白い事に、多くの注目を集めさせたあなたの最近の三作品、「許されざる者」 、「ミスティック・リバー」、そして今回の「ミリオンダラー・ベイビー」は全て内容 が暗いですよね。
それらはハリウッドが求める、ハッピー・エンドで、胸躍るような、これは楽しいや、 という作品ではありませんでした。
現在のあなたは暗い男なんでしょうか？我々に暗いクリント・イーストウッドと いう見解を与えているのでは？


イーストウッド：
いやいや、時にストーリーがそんな風だからだろう。ドラマはそのように終わるからね。


オライリー：多くの鋭さを持った、そういった類の題材に惹きつけられるのでは？


イーストウッド：そうだね、ただ私はドラマが好きなんだよ。---　良い映画や良い 演劇の基本は、素晴らしいドラマを持っていることだと考えている。
時として人には、自分以内か他の人々に対して、ある種の暗い闘争がなければならない。


オライリー：
あくまで私の推測で間違っているかもしれませんが、あなたは、 それが魅惑的であることが気づいて、それによって心を奪われているのでは。


イーストウッド：そうだね、君の推測は正しいよ。


オライリー：
私がそう考えたのは、「恐怖のメロディ」があなたの監督デビュー作で、 それが暗かったからです。
あなたは人々の心理を調べて、それを理解しようとしていますね。


イーストウッド：その通りさ。


オライリー：私、冴えてるでしょう？（笑）


イーストウッド：君は非常に知覚の鋭い人だよ。ホントに（笑）


オライリー：そう、そうなんですよ。



さて、人は興味深い点を持ち出します。
「ダーティハリー」が人気のあった時代、評論家たちはあなたはファシストである と言っていました、ということです。ご存知でしょうが。



彼らは、社会を破滅させているという理由で、あなたに対して金切り声を出して叫んでいました。 そして今は、保守的な人があなたをどなりつけています。 あなたがまるで・・・。


イーストウッド：
う〜ん、私はそんなに多くの人々が叫んでいるとは思ってないけどね。
そういう人は１人や２人はいるとは思うよ。でも、皆がその１人や２人を誇張したと いうことが起こったのさ。
しかし、大多数の批評家は、この作品には非常に寛容だったよ。


オライリー：現在彼らは、批評家たちは、あなたに好意的ですね。


イーストウッド：そうだね、まあ多分・・・特に今回の作品はね・・・。


オライリー：
いいえ、気に入ってますとも。今じゃ彼らはあなたを愛してますよ。 30年前に、人々に銃を撃っていた時代は、彼らは嫌いでしたけどね。


イーストウッド：
そうだね、当時は今より若くて綺麗な男だったから、そういうヤツは嫌われやすいのさ（笑）。


オライリー：
セルジオ・レオーネの西部劇から「ダーティハリー」までのあなたは魅力的で あると実際に思ってますよ。そして現在のあなたは、あなたが賞賛する男、 ジョン・ヒューストンになった。それがあなたという人です。


イーストウッド：
そうかな。それはあなたたちが時間を得て、白髪になったとき、起こることだよ。 君は少し先走りしてるね。





オライリー：あなたには高齢の母親がいますね、今もお元気で。


イーストウッド：96歳だよ。


オライリー：彼女はあなたに起こったことを予想してますかね？、


イーストウッド：彼女は日曜日に、私と一緒に来るよ。


オライリー：アカデミー賞の授賞式に来るんですね。


イーストウッド：日曜日にね、そうだ。


オライリー：あなたの成功について、彼女といつも話してるのでしょうか？


イーストウッド：
いいや、本当にないね。彼女がある作品が気に入れば、ああだこうだと、何か に満足であるとは、たまに言ってくれるだろうとは思うがね。
私の初期の作品の何本かは、アクションが理由だろうけど、好きではなかったようだが 　---　彼女はアクション映画ファンじゃないんだ---　 「ミリオンダラー・ベイビー」、「ミスティック・リバー」や何本かは、 そのストーリーテリングが気に入ってたみたいだよ。





オライリー：
あなたが世界で最も認識可能な人々のひとりであれば、 人々は常にあなたにつまらないこと言ってくるでしょうね。
絶えずあなたに近づく人々に対応するのは難しいですか？


イーストウッド：そう、時にはね。
しかし、時々、人々がやってきても、彼らが素晴らしい人であれば、本当に楽し い会話をすることができるよ。普通は、人の感じ方次第じゃないのかな。


同じ質問をもう何度も何度も聞けば、それに関して君はどのように感じるだろうか? よくわからないが、私は気分が良いんだ。
多分君が70歳を過ぎたら、他の人々が、君がどのように感じるかを尋ね始めると私は思うね。


オライリー：
あなたはそう、75歳です。いや75歳になろうとしていますね？


イーストウッド：ちょうど今は74歳だよ・


オライリー：
体調は良さそうですね。例えば、バーベルを挙げたりしてるんですか?


イーストウッド：
ああ元気だよ、自分でも理解できないけどね。そう、私は毎日トレーニングして、その プログラムを実行し続けているよ。
人はそうしなければならないんだ。---　習慣にしてしまうんだよ---　若者のようにね。 きちんとそれを続けなければならないんだ。


オライリー：食事のほうはどうです。 特別なものを食べてるとか?


イーストウッド：
実際に気をつけていることはね、多量の脂肪分を摂取しないよう、慎重に食べることを ただ心がけているってことさ。


オライリー：あなたには、8歳のお嬢さんもいますね。


イーストウッド：そうだ。


オライリー：ワオッ。


イーストウッド： 君が慎重に食べて、比較的質素なライフスタイルを持てば、ぶらぶらしながら、彼 らが成長するのを見ることができるさ。


オライリー：あっちのほうの楽しみはないんですかね？


イーストウッド：話せそうなことは何もないよ（笑）。





オライリー：
さて、現在、あなたの次の企画は、"Flags (for) Our Fathers" ですね。 第2次世界大戦を題材にした・・・。


イーストウッド："Flags (of) Our Fathers" だよ。そうだね。


オライリー：スピルバーグとの仕事ですよね。


イーストウッド：スピルバーグの会社の作品として、私がそれを監督するんだ。


オライリー：ワオ。


イーストウッド：彼が製作してくれる予定だよ。


オライリー：
それはあなたにとってはかなり大きいプロジェクトになりそうですね。どこで撮影する予 定ですか？


イーストウッド:
ちょうど今は、事前調査の段階にいるといえるかな。 したがって、私がしていることは、どこでどのように撮影するかを調べているところさ。
ほんの少し複雑になりそうだよ。


オライリー：
わかりました。さて「ミリオンダラー・ベイビー」のような作品は、 現在では小さな規模の作品ですね・・・。


イーストウッド:
今ロサンゼルスで作られる映画全体から見れば、非常に小さいと言えるだろうね。でもこ ういう作品は、1945年と1996年の間を行ったり来たりしてるよ。 そして、それは・・・ひとつの周期になっている。
いつの時代も、ある時代独特の映画を取り扱っている。それは入り組んだものだね。





オライリー：
さて、私はあなたにとても感嘆しています。 以前に私はこのことを観衆に言ったことがあります。
私はあなたのキャリアをごく初期の段階から追って来たわけですが、あなたは独力で 立身出世した男です。
頼りになるコネはなかった。誰の尻にもキスしません。あなたはプールの坑夫でした。 「半魚人の復讐」はあなたが出演した最初の映画でしたね？


イーストウッド：そうだ。


オライリー：ある生物があなたを追いかけていました。


イーストウッド：実際に、そうだったね（笑）


オライリー：そしてあなたは自分の望みどおりの条件で、成功した。


イーストウッド： そうさ。わかるだろうが、人はこつこつと働き続けなければならない。
入るには厳しい業界だよ、その仕事を愛してなければ、そこには入れないんだ。





オライリー： わかりました。さて、あなたはとても順調にきましたね。 日曜日、あなたは最優秀作品賞を獲るだろうと私は信じています。


イーストウッド： ああ、君の言う通りになることを願ってるよ。しかし、差し当たりは・・・。　　　　


オライリー：私、間違ってますかね、イーストウッド氏？


イーストウッド：君は間違ってないよ、わかってる。


オライリー：そう、私は決して間違ってませんよ。


イーストウッド： 私はただその場所に行って、96歳の母親と素敵な妻と一緒にいるだけさ。 そして、それはそうなるだろうね。


オライリー：
さすが、よく言ってくれました。
私たちと話すことに時間を取っていただき、本当に 感謝します。


イーストウッド：ありがとう、ビル。ここにいられてうれしいよ。


オライリー：いつでもあなたを歓迎しますよ。ありがとう。

2005　/　02　/　25

'Million Dollar Baby' shaping up nicely for Swank



文：クリスティ・レマイア (CHRISTY LEMIRE)





ヒラリー・スワンクは最近、キャスティングディレクターから仕事の上での自発的な アドバイスをいくつか受けた。
---　男性社会におけるタフな女性役は間に合っている。あなたの内なるスーパーモデル像に 甘受しなさい　---　と。


申し訳ないが、スワンクは自分自身で決定することでうまくやっているようである。
「ボーイズ・ドント・クライ」で性同一障害者ブランドン・ティーナ役を演じ、 25歳でアカデミー賞最優秀主演女優賞に輝いた後、彼女は "Million Dollar Baby" で の演技により、30歳で再びオスカー・バズ（アカデミー賞を巡る噂）と言う名の優美 な出来事の対象となる人物である。


彼女は既に、信念の固いボクサー、マギー・フィッツジェラルド役を演じたことで、 監督のイーストウッド（マギーの乗り気でないマネージャーとして共演）や モーガン・フリーマン（マギーがトレーニングするジムの経営を手伝っているキャラクター ）と並んで、ゴールデン・グローブ賞の作品賞（ドラマ部門）を含め5部門でノミネートされている。


そこで、キャスティング・ディレクター、フェリシア・ファサノによって書かれた、 ニューヨーク・タイムズの記事のご親切な、仕事上のアドバイスに話を戻そう。


「誰かが私にアドバイスしたいって立場にいられるのは素晴らしいと思うわ。何が言いたいのかわかるでしょ？」彼女はディナーの間、サラダやサーモンを食べながら語った。 「私たちはみんな、結局は自分自身で判断するの。人間は他人にアドバイスをすることが出来るのよ。 それを受け取ることも出来れば、それを無視することも出来るわ。みんな大人なんだから 。さっきも言ったように、誰かが私にわざわざ書いてまでアドバイスをしたいと思って くれることは素晴らしいと思うわ。」


こう言う彼女は、1時間のインタビューの間に他のすべての物事に対しても、 現実的な観点で、そして人に伝わりやすい熱意をもって語る。


「私は自分の勇気に従うだけ。なぜなら結局、それが人が持っているすべてだから。私は 単なる“少女”の役を演じることに尻込みしてたの。刺激を与えてくれるとは思わなかった から。」と彼女は語る。
「私は真剣に取り組むべきだった、挑戦すべきだった、自分を限界まで押し進めるべきだった。 何をするにもすべて、・・・すべきだった、・・・しなくてはって感じね。それが私の 情熱がある点で、"arm candy"（男性のお飾り的美人）をただ演じることではないわ」



イーストウッドは"MDB"にスワンクはふさわしいと考えていた。彼女は元々貧し い家庭の出であるからだ。
スワンクはトレーラーで暮らして成長した。やがてロサンゼルスへ引っ越してから 数週間は彼女は母親と自動車の中で眠っていた。(彼女の親は離婚している)


「彼女は中西部特有の平常心を持っていた。彼女はニューヨーク やハリウッドにうんざりさせられたことはないんだ」 とイーストウッドは語る。
「まさに適役のように思えたよ」


"MDB" に出演するための体型を得るために、スワンクは撮影が始まるまでの3ヶ月間、 1日4時間半、ボクシングおよびウエイトのトレーニングを行った。
彼女はさらに1日210グラムのプロテイン（蛋白質）を摂取しなければならず、夜中に 起きてプロテイン・シェイクを飲むことが要求された。
---　ただし、自分の夫（俳優のチャド・ロウ）を起こしたりはしなかったと 彼女は誓って言う。 彼らはマンハッタンのダウンタウンで2匹の犬、猫および2羽のオウムと一緒に暮らしている。


「彼はとにかく熟睡してる人よ」と彼女は笑って言う。
「私は灯りは点けなかった---　プロテインはちょうど私のベッド のそばの小さな箱にあったの。それを持って部屋から出て、シェイクして、 飲んで、バスルームへ行って、ベッドに戻るだけね」


当初、製作者たちは、彼女に10ポンドの筋肉を付けることを提案した。
彼女はそれに従ったが、十分に信じられる体型に見えるとは思えなかった。 そこで、彼女は結局、合計19ポンドの筋肉をつけた。


「私の背中、腕、脚---　すべて変わったわ」彼女は言う。「私のお尻、胃もね」


彼女が自分の容姿を変えたのは初めてのことではない。---　ブランドン・ティーナと 名乗り、一人の男性として人生を送ろうとしたためにレイプされ殺害された若い女性 、ティ−ナ・ブランドンを描いた圧倒的な実話である1999年の作品「ボーイ・ドント・ クライ」のために、当時無名のスワンクは初めてそれを行った。
スワンクは髪を短くカットし、撮影が始まる数週間前から男性として生活することで、 自分の役に没頭したのだった。


彼女はその後、自分を取り戻す事が難しいと気づいた。
「私はもうすっかり女性ではなくなったように感じたわ。わたしは家に戻るとすぐに、私がいつもしている事をし始めたの。私の家族や友人たちと暇をつぶしたりして」と彼女は語る。 「やがて髪は元通りになったけど、少年と少女の中間のようなとこ ろから出られなくなっているに違いないと、心配する瞬間がはっきりとあったわ」


しかしながら、あなたがスワンクが今年の夏に登場したカルバン・クラインの ランジェリー広告を見ていたならば、彼女の女らしさについて疑問は抱かないだろう。
ファッションカメラマン、スティーヴン・メイセルによって撮影された、モノクロの広告は、 思いがけないほどセクシーな、曲線美を強調した手法でスワンクを見せている


「みんな、あんな風な私には気づかないでしょうね。あのような私を知らないもの」 彼女は語る。
「私だってそれが自分だったなんて信じられないもの」 夫の反応は？「彼は気に入ってくれたわ」とスワンクは語る。


12年前のロサンゼルスで彼女は、"Life Goes On" でエミー賞を受賞し、現在は監督 業に注意を向けているロウと出会った。彼は24歳で、彼女は18歳になったばかりだった。


「あるパーティで出会ったの。彼がディナーに私を呼んで、以来ずっと私たちは一緒よ」 彼女は語る。


同業者である俳優と結婚していることは役に立つと彼女は語る。


「彼は、上昇期と下降期、それらが意味するものを理解しているわ。多くの人たちは、この生活が非常に楽で、世界中を飛び回ったり、飾りのついた衣服を着てると考えてるの。私はなぜそれがそれほど魅惑的に見えるか理解は出来る。でも結局、それ実際にはタフなビジネスでもあるわ。それを本当に理解している人がいてくれるというのは重要なことよ」

2004　/　12　/　24

Punch-drunk lady: Hilary Swank looks to score another knockout in `Million Dollar Baby'


文：Stephen Schaefer






"Million Dollar Baby" に出演する前に、ヒラリー・スワンクは、 クリント・イーストウッドをただちらっと見かけたことがあった。


「ボーイズ・ドント・クライ」の時の、ナショナル・ボード・オブ・レビューのセレモニー 中ずっと、私はクリントの後列に立っていたの。でも彼は私に気づいていなかったと思うわ」



イーストウッドはちゃんと彼女に気づいていた。


イーストウッドが監督し、ボクシング・コーチのフランキー・ダン役で 主演するボクシング・ドラマ "MDB" に出演後、スワンクは、その演技に対し、オスカーの ノミネーションを受けると予想されている。


オスカーの選考資格を得るために、今月初旬に限定公開で封切られた 、"MDB" (1/7拡大公開)は、イーストウッドの最高作として賞賛されている。
本作でスワンクは夢を抱いてロサンジェルスへ来た、ミズーリ 州出身の貧しい女性、マギー・フィッツジェラルドを演じている。


「とても興味深いことに、マギーは、これまで演じてきた中で、最も私に近い キャラクターだったわ」とスワンクは語る。


「私はトレーラー・パークで育ったの。マギーも同じ。私はネ ブラスカで生まれ、家族はアイオワやネブラスカに住んでいた。現在はミズーリに 住んでいる兄弟もいるのよ私はマギーのように夢を持った少女だった。---　 私は決意し、努力し、集中してきた。自分の夢を実践出来て、とても幸せよ。 映画の中でマギーが、『これまで私が良い出来事と思ったのは、これだけ』と言うセリフで、 私はマギーと繋がりを持てたわ。その言葉に私はどんなに共感できたことか」



スワンクは撮影前、ボクシングの体得と体型作りに3ヶ月を費やし、撮影中 もずっとトレーニングを続けた。


「私がボクシングについて考えた途端、何も本当に知らないことがわかったわ」と彼女は語る 。
「私は、2か月程度のトレーニングが必要なだけかなと思ってた。撮影が始まるまでの3ヶ月間、1週間のうち6日、1日に4時から4時間やった後も、もっとやりたかった。 もっと時間が欲しかったわ」


それはやや強迫観念的のようだが、スワンクは認めていた。


「私はボクシングを全く理解していなかったわ。人を殴らなければ殴られるとい う概念がわからなかったから。私にはさっぱり理解出来ないものだった。 ボクシングなんて、全く考えたことがないものだった」


彼女がボクシングを始めてみると・・・。


「ボクシングって、面白いチェスの試合のようね。人はリングに誰かといれば、 どちらの相手も、新しい強さや新しい弱点を現わすの。私はずっとプロの ボクサーとスパーリングをしていて、殴られたり、殴ったりしてた。 初めてパンチが当たった時に言ったの、『ああ、ごめんね！』って。 私のトレーナーは、わめいて、ひどく興奮してた。 私が『すみません、すみません』って言うと、彼は『もうヤメだ！』と言ったわ」


「その後すぐに　どうなったかわかるでしょ？　ボクサー心理はすぐに思いつくわね。 私は一度、この男の鼻を血まみれにしたわ。私はトレーナーの方を向いて、微笑ん だけどあやまりはしなかった。私は相手をとても尊敬していたから、本当に それはビックリした感じだったわ。自分の心で考えていることが、 ボクシングに関しては反対のことになってしまうの。もちろんそれは肉体的 なものだけど、私は、この映画から実際に学んだものが、心の力、そ して私の心がいかに自分の最大の障害だったかであることが、何よりもわかった。」



スワンクの夫、チャド・ロウは、メソッド俳優との結婚は楽ではないことをわかっていた。


「彼は私と時々殴り合いをしてるの」、とスワンクが微笑んで言う。


「私は2、3回彼を殴ってるわね。彼はそれを信じることが出来なくて 『どこからパンチが来たんだ？』って言うと、私は『さあね、よく見てなよ。 パンチの出る方向はもっとあるわよ』って感じ。おまけに私は左ききなの」


1つのスポーツを克服した現在、スワンクは家庭により密接した、 もうひとつの仕事について考えている:母親になることだ。


「私はもう30歳なんだなあと考えてしまう。---　2、3か月前に30歳になったのだけど---　私は、そうなるだろうと思ってるわ」 彼女は語る。


「確かに、20代にはその心構えができていなかったけど、遅かれ早かれ、 そうなることは予想できるわ。」


もう一度、オスカー・レースの興奮を感じることについて、「当然、それは名誉なことだわ」 とスワンクは語る。


「そう答えないつもりはないわ。でも、私がいつも思い出されてくる興味深いことは 、私の愛情、私の情熱は人間に向けられているから、私はただ、いつも良い題材を見つけて 、素晴らしい物語を伝える一部でありたいということね。すべての人たちは物語を持ってい るわ。それが私を魅了しているの。人はその結果について実際には考えたくない。 人はその中に実際に存在したいと思うだけ。これは、私がこれまでにした最高の経験だった。」





スワンクは以前、「ボーイズ・ドント・クライ」の演技でアカデミー賞に輝いている。 その作品で彼女は、少年のふりをして、そのために殺害された少女を演じた。


「誰もが私を認識するようになったこの映画は、とても強烈で、とても激しい内容だった。 だから、そんな風に私も見られた。


彼女の母親がもっと良く知っている。


「馬鹿みたいなことは、私がドラマチックな女優としてアカデミー賞を受賞したことを、 私の母親が最も強烈なジョークと考えていることね。


「彼女はそれが本当に当然だと考えているわ。だって母親は、私をおばかで、 クレイジーで、おもしろい人間と思っているの。私はコメディで仕事を始めていたから」


ともかくアカデミー賞受賞式の夜まで、笑うことは待たなければならないだろう。

2004　/　12　/　26

以下は、映画情報サイト、 "Cinematic Happenings Under Development（"http://chud.com/"）に掲載されていた インタビューです。


但し、上段（その２）のインタビューの内容とダブっている箇所もあることから、 当サイトの独占インタビューではなく、 プレミア時の共同記者会見から書き起こしたものと思われます。

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文：Fred Topel





Q: この作品はいったい、どのように起こりましたか?
あなたはクリントに会ったことがありましたか?


ヒラリー: 私はクリントに一度も会ったことがなかったの。
クリントと一列に並んで立ったことはあるけど、彼が私に気づいてたとは思えないわ。


Q: 何の列ですか？


ヒラリー:　よくわからないの。ある時のあるイベントね。それが何のイベントであったかわからない。 それがどこだったかも覚えてさえないわ。
私はただクリントは覚えているの。


Q: 彼はあなたを知っていましたか?


ヒラリー: 「ボーイズ・ドント・クライ」が公開された頃だと思うけど、わからないわ。


パブリシスト: それは（ナショナル・）ボード・オブ・レビューの授賞式だね。


ヒラリー: そうよ、ボード・オブ・レビューよ。やったね。 それはボード・オブ・レビューだったわ。
私は彼の後ろに並んで立っていて、そして、ただぽかんと見とれてたの。



レイクショアのプロデューサーたちが脚本を私に送ってくれて、 「君はこの作品にうってつけだと思うよ」って言ってくれたの。
私はそれを読んで、笑って、泣いて、奮い立たせられて、感動したわ。 私は、ポール・ハギスが驚くべき脚色をしたと考えたわ。 私は、即座に短編集を得て、 同様に短編を読んだの。 「これに惚れた」と、私は言っていたわ。
2、3週間後に電話がかかってきて、こう言われたの。「あのね，何だと思う、 クリントイーストウッドが企画を始めて、監督したがっているんだ。そして、 私たちは君達と共にミーティングを始めなきゃならないんだ」って。
私は椅子から落ちそうになったわ。そして出かけて行って、クリントと共に座って 、映画についてただ話しただけだったけど、素晴らしいミーティングだった。


Q: あなたは部屋に入ると、彼はそこにいたわけですが、そして、あなたの最初の印象は？


ヒラリー: クリント・イーストウッドだわ〜って感じね。部屋に入ったけど、 クリントは人を無言のままにすることができるのよ。
人はただ少しそこに座って、ぽかんと見とれているだけで、彼を受け入れてしまうの。 信じられないでしょうけど、彼はさらに本当に人を快適で気楽な気分にさせてくれるのね。
そして、私がずっと彼を知っていたような感じで、私たちは話し始めたわ。


Q: 　彼に魅せられたりはしませんでしたか？


ヒラリー: わかるでしょうけど、クリントが部屋に入ると、誰もがただ動かなくなってしまう。 本当にそうなるの。誰もが、誰もが、止まっちゃうのよ。みんながそう。
役者たち、監督たち、彼とちょうど同じくらい多くの才能を持っている人々でもやはり、 クリントに魅了されるのよ。


つまり、彼は象徴であり、伝説であり、ある意味、彼は映画の歴史の一部であるってことね。
私はクリント・イーストウッドの映画を観ながら育ってきたってことなの。 私が生きてきた以上に長い間、彼は映画を作り続けてきたの、彼は普通じゃないわ。 第2のクリント・イーストウッドは決して現れないでしょうね。絶対にないわ。私が考える 、偉大で最高に驚くべきものが、クリントということで、私にはそれほど大きな期待があった。


当然、私は彼が、監督、プロデューサー、俳優、ミュージシャンとして才 能豊かであることはわかってるから、彼と一緒にただもう仕事ができるんだという それらの期待があったの。
彼と一緒に働いてきた他の人々が、「君はクリントとの仕事で人生 で最高の経験を持てるだろう」と言ってくれたけど、まさしく、彼と会うようになり、 彼を理解していき、彼と仕事をするということ全て、全部の過程がそうなのよ。


どんなものでもどんどん進んで行くので、人の想像力はかなりたくましいのよ。そして、 私が考える私たちの期待は実際にはほとんどの場合一致しにくいけど、 クリントは私の期待をさらに超えてしまうのね。


Q: どんな風に?


ヒラリー: 彼は明らかに非常に有能よ。 これは今での彼の最高の演技であると思ってるの。
彼は74歳だけど、私が考える中で最高の演技と思うわ。あくまで個人的な意見よ。
私はこの映画での彼は特別だと思ってるし、演出は見事だと思ってる。本当に驚かされたわ。


まず第一に、私は、それがクリント・イーストウッドなんだという事実を克服する必要が あったの。そして、まもなく実際に仕事を始めたわ。


Q: それはどれくらいかかりましたか?


ヒラリー: 仕事を始めるまでに何回も彼に会ったせいで、一緒に働き始めた 時にはそれは終わってたわ。


これは本当のことだけど、私には、じっと見つめずに、自分の台詞を言うことが できたらなあと、望んでいた部分があったの。
しかし、私はクリントに関して文字通りの意味で一日中話したいぐらいなの。
そして、私が彼には多くの能力があると考えているにもかかわらず、本当に際立 っているそのいくつかがクリントには思いどおりにできるのに、彼は映画において、 その仕事と彼のクルーにとって適切だと感じる人々を得るのよ。
だから、彼の周囲にいるのは、彼が仕事にとって最高であると感じる人々よ。 そして、彼はちょっとだけただ言うの。 「自分の本能を信じろ」、そして、「あまり考えるな」とね。


Q: 彼はリハーサルを撮影しましたか?


ヒラリー: 彼はリハーサルを撮影したか。彼に尋ねる必要があるわね。 私は気付かなかったので彼が何回リハーサルを撮影したかはわからないわ。
でも、そう、彼は自分たちの本能を信用するということを信じているの。
彼は、ある理由で私たちには本能があると信じてる、そして、あまり考え過ぎないと いうことを信じてる。
しかし、それは私を、彼が最も驚くべき共同制作者であるという点に導くの。
彼は皆と共同作業をしているけど、完成した作品では、すべてのもののいたるところに彼の指紋 （特徴）があるのよ。人は本当にそれがいったいどうして起こったのか本当にわかっ てさえいなかったわ。
それは微妙で、シンプルで、そして、全く本当に驚くべきものにほかならないの。


Q: 彼はあなたにアドバイスを与えましたか?


ヒラリー: そうね。彼はただ、そっとあなたを導いて、案内して、 「君はならどう何を考える?」、「おお、それをやってみれば」、 「うわ、面白かったよ」と言うの。彼は、人が創造できそうな環境を整えるのね。





Q: あなたは、マギーになるために何をしましたか?


ヒラリー: 面白いことに、私はマギーと"Iron Jawed Angels"　（ＨＢＯのＴＶムービー） で演じたキャラクターもそうなんだけど、最も身近に感じたのはマギーね。
私にとって、クリントと仕事をするということは、マギーにとっての、 「ドリーム・カム・トゥルー」なの。だから彼女がフランキー・ダンと持っている その関係は私のクリントとの関係ととても似ているわ。
それはもう本当にきちんとした類似だったわ、そして、私はマギーを行かせたくはなかったわ。 この映画の毎日が1日で去って、私は悲しかった。
そして、クリントはもちろんとても早く仕上げて、撮影期間はとても短く、2日早 く終わっていたの。
撮影の最後の方では私は、私がセリフを覚えないようにすれば、その分、ちょっと遅くなる から、より長い時間残ることができたのに・・・、とジョークを言い続けていたの。


Q: モーガン・フリーマン演ずるキャラクターが言うように、あなたは、 ボクシングは覚えが悪いことがわかりましたか?


ヒラリー: 私は、自分がボクシングに関して何を知っているのかと考えた瞬間に、 ほとんど何も知らなかったことがわかったわ。
私は、おそらくトレーニングは2ヶ月間ぐらいだけ必要かなって気がしてた。
私は、1日あたり4.5時間、撮影をスタートする前の3ヶ月間、1週間に6日間、1日あたり 4〜4.5時間のトーレニングをしたけど、もっと欲しかった。 私には、もっと時間が必要だったの。


Q: どんなトレーニングでしたか?


ヒラリー: トレーニングについて話すつもりだけど、まあどちらかと 言えばボクシングについての話かもね。
いかにボクシングは人間の血がしみ込んでるか、私は全くボクシングを理解していなかったの。
私は人々を殴って、殴られたいという概念を理解していなかったの。 私を完全に避けたのは、 それは私には理解できない何かだったわ。 私はボクシングのファンではなかったの。
私は、ファンでなかったと言うことさえなかったわ。 ただ単にそれについて考えなかったの。



ボクシングを始めて、私は気づいた。
みなさんの誰かがチェスをするかどうかわからないけど、それは素晴らしいチェス のゲームに似ているの。
人は誰かと共にリングにいると、絶えず自分たちの強さと弱点を探しているの。 そして順番に、それぞれの相手が新しい強さか新しい弱点を表わすので、それら から自身の強さと弱点を学ぶのよ。
私は常にプロのボクサーたちとスパーリングをしてたわ。私は殴られ、殴ったわ。


ボクシングに関するもうひとつの事は、それが自分の心に関わるものがかなり多い ということね。
もちろん、肉体的なこともあるけど、この映画から私が本当に学んだのは、精神力と、 いかに私の心が私の障害であったかということで、何よりもそれがわかったの。
ある朝目覚めて、それが土曜日だったら、その週に既に20時間トレーニングをしてるでしょう。
私はこう言うでしょうね、「ああ、もう今日はホントに出来ないわ。私はもうかなり疲れていて、 もう一杯の卵白は飲めないし、亜麻油も飲めないわ〜」ってね。
もし、私がそういう態度に従ったとすれば、当然、それは私に、私の心に原因があると 言えるでしょう。
その上、それから何も獲得しなかったから、私はそこにいなかったかもしれない。
だから自分のために設定した自身の障害を乗り越えた瞬間、私は出来るんだ、やってやる と言い聞かせたわ。私は毎週バリアを突破しようとしたのよ。





Q: 筋肉をずっと維持してましたか?


ヒラリー: いいえ、つけるだけで精一杯だったから。
私のトレーニングは1週間あたり6日間、毎日、2時間半がボクシング、そしてだいたい、 1時間半から2時間がウエイト・リフティングね。



プロデューサーは、筋肉を10ポンドつけるように私に頼んだの。 私は19ポンドの筋肉を つけたわ。体重は110ポンドから始まって 129まで行ったの。
そして、それをするために、私は1日あたりタンパク質をの210グラム摂取しなければな らなかった。
現在、人の身体は大量のタンパク質を吸収することだけはできるので、私は 1時間半毎に食べなければならなかったの。
そこで、食事では、まさか一気に8〜12個の卵白を食べられるはずがないから、卵白ドリ ンクとして飲んでいたのよ。それはもう、今までで最悪のことね。
亜麻油も飲まなければならなかった。亜麻は人間の脳のために、また、 多量のタンパク質を摂取し、本当に全力で動き続けるために、大切な油なの。 それは本当に重要な脂肪よ。 亜麻油のテーブルスプーン約一杯分には、 脂肪が約15グラム含まれてるのよ。


Q: トレーニングはどれくらいの期間でしたか?


ヒラリー: ちょうど3ヶ月ね。でもそれは、撮影が始まってもトレーニングを続けていた 期間を含んでないわ。
それはともかく、人間の筋肉は構築するためには休息する必要があって、私は九時間 の睡眠が必要だったけど、実際には自分に逆のことをしていたのね。
そこで、9時間眠ったけど、長い間食べずにいることは出来なかったので、 夜中に起きて、タンパク質のシェイクを飲まなければならなかったのよ。





Q: アクセント（訛り）は簡単でしたか?


ヒラリー: 私にはミズーリ州のあちこちにアクセントが自然な親戚が多くいるのよ。
でも、それはネブラスカとは異なっているわね。
（「ボーイズ・ドント・クライ」の）ブランドン・ティーナのアクセントはこれと はかなり異なってたわ。 彼らの"I" の発音はかなり違うの。
しかし、アクセントのすばらしいことはそれをし始めた途端に、自分がそのキャラクターに なれた気がするの。
私はアクセントを使うことが本当に楽しい理由は、それが自分自身とキャラクターと を使い分けることが出来るからと思ってる。





Q: オスカーの噂をどう思いますか?


ヒラリー: 明らかに、それは名誉よ。 私はそう言わないつもりではないわ。
しかし、私がいつも言っている興味のあることは、常にただ、優れた題材を見つけて、 素晴らしいストーリーを物語りたいということなの。
なぜなら、私の愛と情熱は人々にあるの。 私は人々を愛してるわ。 そしてすべての人には物語があって、それが私を魅了するのね。


私は自分を奮い立たせてくれる映画の一部でいることを本当に誇りに思うの。
それは、私が大きな敬意を持っている人物よ。マギー・フィッツジェラルド、 私は彼女に大きな敬意を持っているの。
クリント・イーストウッドとモーガン・フリーマンと一緒に働かせてもらったら、その 結果については本当は考えたくないものでしょう。その中にただいたいと思うだけよ。
今回は私がこれまでしてきた今までの中で最高の経験だったわ。





Q: あなたはちょっとでもケガをしましたか?


ヒラリー: ほら、わかるでしょうけど、長期に渡るような大きなケガは何もしてないわ。
肩のあちこちにはちょっと違和感はあったわね。唇が血だらけになり、鼻にあざを作って 、何回か頭突きを食らったわ。それ以外に他には・・・水ぶくれが多くあったかな。

2004　/　12　/　15

以下は、米国の映画情報サイト　http://filmforce.ign.com/　に掲載されていた記事です。


文面から判断して、プレミア時の共同記者会見での発言から構成しているものと思われます。


記事の冒頭部は、フリーマンのこれまでキャリア紹介、作品のあらすじ、等なので、 省略しました。
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Interview: Morgan Freeman
The legendary actor discusses boxing, being dignified and his friend named Clint.


インタビュー：モーガン・フリーマン 伝説的なスターが、ボクシング、威厳さ、クリントという友人を語る


文：Jeff Otto





フリーマンは子供っぽくにっこり笑いながらプレス・ルームに入って来る。
彼はプレスによって時折気難しいのが知られてる。 それはプレスに対して狭量であるという 意味ではないが、それ以上に彼は、思い浮かぶことを述べて、彼らがばかばかしい質問を 自分に尋ねたとだれかに言うことを気にしないのだ。
彼から率直な返答を得るのは、時には非常に難しい場合があるが、私たちはベストを尽くした。





フリーマンはだれかが彼を評する時に「威厳」という言葉を使用すると、大いに笑う。
彼は自身ではそのようには本当に思っておらず、自分の演技は脚本や演出によるもので、 自分自身の努力の結果ではないと述べる。


モーガン・フリーマン（以下ＭＦ）
それは自明のことだよ。良い脚本がそうさせるんだ。それを読むだけで、どうい うものかわかるんだ。重要なことのひとつだよ。わかるだろう？素晴らしい脚本を 得られたら、本当に働く必要はないのさ。
昨日クリントが電話をしてきて、みんなが全て一様に“素晴らしい”という反響について 喋ったんだ。
彼はこう言ってたよ、『やれやれ、みんなまだ作品を観てないんだろう。もしかしたら 映画を公開すべきじゃないんじゃないか』ってね（笑）』


わかるだろうが、私が述べることは何もないよ。キャラクターを創造してい くうえでの一番の楽しみは衣装部にあるんだ。衣装が見つかってしまえば、 その衣服をつけて、多くは持たないことを知るんだ。・・・そして、帽子を 見つけるんだ、私は、いつも帽子を探すのが好きなんだよ。
小道具さんたちが現場を装飾してるんだが、それがすべて素晴らしいんだな。彼らがセッ トアップしていた間、私はたまたま漫画雑誌を読んでいたけど、まったく 読むのは止めなかったよ


それはどんなものにでも似ているのさ。 作家がうまくいっているなら、やらなければなら ないものがある。
スペンサー・トレイシーが言ったように『家具を揺らすな』と言わなきゃね。
人々はそれを聞いて、私が控え目であると言うが、私は謙虚な人間じゃないよ。 でも自分がしていることに正直でいる必要があるし、自分がしていることはチャネリング ［霊界交流？］だ。 私はそう理解している。
たぶん、誰もがそれが簡単であると信じているわけではない、そしてたぶん、それは誰に とっても簡単なことではない、と私は思うよ。
私にとって、それは簡単なんだ。 それで働く必要があるかどうかがわかるなら 、私は、間違った仕事に就いたのさ。





『ミリオンダラー・ベイビー』は、ボクシングを題材にした映画であるが、 ボクシング映画として本質的に分類しにくいだろう。


ＭＦ： 私はボクシング・ファンだ。でも誰が誰と戦ったとかは語ることは出来ないね。重量の階級の 違いもわからないから、ウエルター級とかミドル級とかもあなたに説明出来ないよ。
そう、映画はボクシングに関するものじゃない。それはこれらの人々に関するものなんだ。 あなたは同意しないかな?
人々はそれはボクシングについての映画だと言ってるけど・・・私はまったく同意しかねるよ。 私は、それがボクシングに関する映画であると思っていない。
ボクシングはプラットホームのようだ。 試合を最後までやり抜いたところが 本当の休憩地なんだ。





数年に渡って、フリーマンはクリントイーストウッドとの親密な仕事の関係を形成している。 スクリーンの上で彼らは共に一流スターの不思議な作用を共有している。


「『許されざる者』で最初に共演するまでは、私は、彼を一度も見たことがなかったんだ。 撮影現場で彼に会って、私は同じ雰囲気を感じたんだよ。
それは人が役者をどのように感じるかということだ。 私が言いたいのは、クリントを非常にイイ男であると知ってるということさ。
私は長い間彼を知っているが、それは純粋に、彼の仕事を見てから、彼の仕事 に理解を持っているということなんだ。





イーストウッドは自分の作品でキャスティングする俳優のタイプには非常に慎重である。 現場での彼は、絶えず俳優たちの頂点にいる映画監督というよりも、 むしろガイドとしてより役目を果たすと言われている。


ＭＦ：
本当、彼は何もしていないよ。 でも、彼は現場にいる時は、自分がすることを 理解した方がよいだろうね。彼は細部に至るまで綿密に管理はしていないから。
・・・彼は映画では権限を得ているが、人は管理しない。 そして、私は非常に巧くそれに応じる俳優のひとりなんだ。





世論とは逆に、フリーマンは、イーストウッドは、彼がスクリーンの上 で演じるキャラクターのようでは全くないと言う。


ＭＦ：
同じ奴じゃないね。監督としてはソフトな語り口で、非常に親切な人だ。
俳優としては、彼がいるだけで、そこに "morph"（？） があるんだ。ほんの少しね。
人はそれを見るよりそれを感じるだろうね。





フリーマンのナレーションは映画が続いている間、ストーリーがより まとまるための組み立て装置として役立っている。
フリーマンは、ストーリーが向かっていた部分に関する知識を持っていることが、 ナレーションに抑揚を設定するのを助けたかどうかを尋ねられた。


ＭＦ：
それについては全く考えなかったね。なぜなら、私がナレーションをした、もしくはこれら のボイス・オーバーをさせた時は、普通に人がナレーションする方法だからね。
マイクとテープレコーダーを持って部屋に座って、ただそれを読むだけさ。 私は自分が していることについて考えずにいて、ただ対話を活かそうと心がけた。それがあったようにね。
だから私たちがここにいて、“コレはこうなりましたか、アレはこうなりましたか？”と 聞かれても、それには3つの単語の答えしかないんだよ。“I don't know.”さ。
私が話したい気になるかというと、それはノーだ。何も起こってないからね。 私はただそれを読んだだけで、それから、みなさんが作品のそういうことに色を加えると、 やがてそれは必要ならば何でも得てしまうだろう。
私が恐れているのは、みなさんがどんな部分でも必要なものだとして、 誤った多くの事を書くことなんだ。みなさんは自分達がそうするのを本当に知っているだろう。
活動の場でそれをするのに慣れて、特に最小限主義者の作品では、かなりの部分を想像 に委ねてしまうだろう。 人の想像はもうどんどん活発になるからね。 それは素晴らしいともいえるが。 私たちが作品を作っていると、私は、同じことが起こる と思うよ。
自分が欲しいカラーを何でも、ここで塗り終わっても、まだほんのわずかに闇の部分 があるんだよ。

2002　/　12　/　13

以下は、
“ブラック・ムービー”に関する情報サイト、www.blackfilm.com/ に掲載されていたインタビューを元にしています。

オリジナルの記事では、：
http://www.blackfilm.com/20041210/features/morganfreeman.shtml
インタビューを書き起こした構成が悪いのか、質問の順序がバラバラで、話題があち こちに飛んで、わかりづらいので、主に「ミリオンダラー・ベイビー」に関する部分を抜粋し 、独自に構成しているものですので、ご容赦下さい。
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Million Dollar Baby: An Interview with Morgan Freeman



文：Wilson Morales




モーガン・フリーマンは業界の最も信頼できる俳優のひとりであり、苦しみの生涯 を耐えて生き延びて、物語を語って生き続けてきたように思える人物というくつろいだ 権威を持つパフォーマーである。


彼の最新作品、クリント・イーストウッド監督の 「ミリオンダラー・ベイビー」では、彼は過去の数々の作品で演じた役ととても似て いるキャラクターを演じている。
彼は“スクラップ”役。 "Hit Pit" という名のくたびれたジムのマネージャーを しながら現在は自分の時間をのんびりと過ごす元ボクシング選手である。



この "blackfilm.com" との最近のインタビューでは、フリーマンは、 ハリウッドで働くことは、キャリアの不確実性という一定の状態で生きることを意味して いると説明し、彼はどの点からみても、銀幕で演じるキャラクターと同じくらい 議論好きであると明確に立証してくれる。





クリント・イーストウッドとの2度目の仕事の満足感はどんなものでしょうか?


モーガン・フリーマン（以下ＭＦ）: それはひとつの喜びだね。 クリントと共に働くということは、驚くべきものなんだ。


あなたとクリントは仕事を離れても友人なんですか？


ＭＦ：そうさ。どんな場合でも気軽に仕事が出来る関係だね。
もし私が彼の仕事の他は何も彼のことを知らなかったとしても、それでも彼は 撮影現場では同じ男だよ。本当にイイ人さ。


彼と一緒に共に働く者は皆、彼がくつろいだ雰囲気であると言いますね。 それは人に伝わりますか?


ＭＦ： それは伝わるだろうね。私はそう思うよ。
明らかに、自分の環境で穏やかな状態でいられたら、自分がどこにいるか、そして、 自分が何をしているかについて安心感を持てるだろう。


クリントは準備された状態で来るんだ。
彼は非常に用意が出来ている。---彼は宿題を済ませているのさ。 人はそれを見ることができないが、彼が一生懸命勉強しているんだよ。
だから私は、それが彼が身につけた方法であり、今、自分が何をしているか を彼は正確に理解していると思ってる。



彼は、いつも自分と一緒に働いている人々という、素晴らしいバックアップ（蓄え）を持 っている。そして同じ理由で誰もが皆、彼と働いてるのさ。
彼は皆が自分の仕事をすることをあたりまえだと思っている。 彼は細部に至るまで綿密に管理するようなことは全くしていないよ。


ティム・ロビンスは、信頼出来る空間に置かれるような感動をこれまで一度も 経験したことがなかったと語っていましたね。


ＭＦ：ああ、そうだね。





最初に脚本を読んで、どう思いましたか?


ＭＦ：どう思ったかって? 「私はこれをやってもよいのか?」「金を支払わなけ ればならないんじゃないの?」っていう感じだね。


脚本に魅力を感じた点は何でしたか?


ＭＦ：すべてさ。 つまり、非常に上手く書けていたんだ。


わかるだろうが、セリフの他にはごくわずかのことしか書かれていないが、 何も加える必要のない本当に優れた脚本があったとしたら、すべての種類の 指示がほとんど書かれた脚本を得るということだよ。--- “彼は目を輝かせて言いました”(彼は目をぎょろぎょろさせる）というような感じにね。


脚本がそれほど良かったので、演技には神経質になりましたか?


ＭＦ: いいや、この作品ではなかったね。本当に優れた脚本があるなら、ただ演じるだけさ ・・・食欲があれば、美味い食事をとった後でも、すぐに食べるようにね。





あなたが演じる役の多くが、作品の他のキャラクターたちの関係の中で、生まれながらの知恵か厳粛さを身につけてますね。 あなたはどのようにそれぞれの役を特有にしているのですか?


ＭＦ：厳粛さ、そうなのかな? 今は、厳粛さに関して話しているのかな? 私はわからないな
---　多分、私は、ただ厳粛に引き付けられているだけだろう。それは、私が役を 受け入れるようになったということかな。


厳粛さはこれまでに論じ尽くしてますか?


ＭＦ：そうだね、 今までボクシングをしてるみたいにね。





このキャラクターに引き付けられたものは何でしょうか?


ＭＦ：そうだね・・・君の名前は何ていうの？


トッドです。


ＭＦ：君が厳粛なものについて語ろうとしていたことと関連して言えば、この作品の登場人物たちの中には、ある痛みを耐えて生き続けなければならない痛みのレベルがあって、適当な自分たちの哲学がある反対の面が明らかになると、私は考えてる。


例えば、スクラップの場合、彼は全てのことを受け入れているようだ。彼は他の誰かの 状況や境遇に関して性急に判断を下しがちな男ではない。
デンジャーの存在がその適例だ。
フランキーが「彼をここから追い出せ」と言うと、彼は「誰も傷つけてはいないさ」 と言うんだ。


彼はファイトNo.109を乗り切りましたね。


ＭＦ： No.110を乗り切ったよ。





スクラップは非常に明敏な観察者ですね。


ＭＦ：そうだね、でも彼の周りの人々は、 彼の一生で彼が生きてきたゲームの中にいるんだ。
そう、彼は理解力に富んでいるが、彼は多くの経験を持っている。 彼には、多くの入力され たものがあるんだ。


そして、彼はフランキーとの30年間に渡る関係を楽しんできました。


ＭＦ：ああ、その通り。　彼は何がフランキーを動かしているかを理解してるんだ。





ヒラリーはどんな人でしたか?


ＭＦ：時々、人はある状態になる---私も一緒だよ。
それはしばしば起こるんだ。---素晴らしいダンス・パートナーを得られた状況が。
自分のあらゆる動きを本当に予想出来て、他の人たちのあらゆる動きも予想出来る、 ひたすら一緒に流れて動けるような相手を。
それがヒラリーなんだ。


彼女は映画ではタフな女性ですね。


ＭＦ：実際、タフな女性だったよ。


ヒラリーを見ていてどう思いましたか?


ＭＦ：彼女は素晴らしく見えたよ。 彼女は絶えずトレーニングしていて、決してじっと していなかった。
彼女は縄跳びをしているか、 サンドバッグを打ってるか、スピード・バッグを打ってるか、 シャドーボクシングをしていているか、どれかをやっていた。





ファイト・シーンの撮影はどんな感じでしたか？


ＭＦ：ハードだったよ。君は関係を持つつもりはなかった誰かに対してパンチを打ったこ とがこれまであるかい？いつかやってみるといいよ。
空気を切るぐらい一生懸命、ただ打ち続ける。何時間もやらないが、たった1回だけ ではなく何度も打つんだ。終わった時にはほとんど腕を上げることができないよ。





あなたには、この作品の他に、公表されている4本の映画がありますね。
自分のスケジュールにそれら全てをどのように都合をつけるのでしょうか?


ＭＦ: 君の質問の暗に含まれた部分は、私が退職するべきであるということかい?


それはもうホントにとんでもない仕事の量ということですよ。


ＭＦ：君が最後に私の映画の1本を観たのはいつだった？「ビッグ・バウンス」かい。


私はちゃんと休んでるよ。休みを取らねばならないということはないね。休みは それなりに生ずるものさ。
いかなる理由でも君が興味を持つ何かがあるとしたら、少なくとも私が考えられるものは3つある。
1に金、2に優れた脚本、傑出しているか興味深いキャストが3番目だ。
ロケーションと言いたいところだが、私は、今までにただロケーションにいようと映画に 出るために、どこでも行ったとは思ってないよ。


人は働きたくないことが何度かあるだろう。絶対に、多くあるはずさ・・・たぶん君は既 にジーン・ハックマンのような人々と話したことがあるだろう。
彼らは遅かれ早かれと理由でひたすら映画に出演し続けてる。 それが“遅かれ”か“早かれ”かはわからないが、電話のベルが鳴るのが止まってしまうものなんだ。


今までベルが鳴るのが止まったことはありましたか？


ＭＦ：そりゃ、あったよ。1981年には私の15分間は終わった（有名人にはなれない）と考えていたんだ。私がわかってるのはそういうわけさ。


1981年に、なぜあなたのキャリアが終わったと思いましたか?


ＭＦ：良い質問だ。 私は少しの仕事も得ていなかったんだ。


私のキャリアは1967年後半にいわば本当にギアを始動したというもので、1967年から1980年 の間は、ゆっくりとした、緩やかな傾斜のようだった。物事が着実にどんどん進んでいる という感じだろうね。


当時、私はテレビ映画に出演していて、それは1980年の12月には撮影が終わった。
次に、1981年12月が来た、そして、1982年9月が来たように1982年12月が来た。 そして、1983年9月が来たんだ。
その時までには、たぶんタクシーの免許を取得したほうがよいと考えていたんだ。 当時はニューヨークに住んでいたからね。
私がタクシーの免許を取得できたなら、リムジンを運転できたはずだ。---　私は運転が 好きだからね　--　リムジンの仕事に就くことができただろう。
でも、仕事に行くために毎朝起きる時はいつも、あともう一日で辞めると独り言を言 うだろうな。



それから私は「ハリーと息子」のためにポール・ニューマンを求めてオーディション を受けに行ったんだ。そして、彼は私に仕事を与えてくれた。


沈滞している年月が起こる理由を考えたことがありますか？


ＭＦ：理由？　それは、ただの馬鹿げたことのひとつさ。全ての役者に起こることだろう。





舞台で「ドライビング・ミス・デイジー」が上演されたのは？


ＭＦ：1987年だね。


「N.Y.ストリート・スマート」は同じ年ですよね。


ＭＦ：同じだね。 それは素晴らしい年だったね。 1987年は素晴らしい年だった、1967年は素晴らしい年だった、1957年素晴らしい年だった、1997年は素晴らしい年だった。 1977年は素晴らしい年だった。





今回の作品のようなシリアスなドラマの後に「バットマン・ビギンズ」のよう な作品に移ることはどれくらい厳しいですか? ＭＦ：何も難しくないよ。 ある作品は一定の量の芸術的な満足を人に与えるし、そして、 ある作品は素晴らしい財政的な満足を人に与えるだろう。 何が難しいんだい?





ヒラリーのことをもうちょっと話して下さい。あなたは撮影の初日に彼女と会ったのですか？


ＭＦ：わたしたちは撮影現場で本当に初めて対面したんだ。
「許されざる者」の時もクリントともそんな感じだ。一度も直接本人と会ったことはなくて、 現場で会って、ほとんどひざまづいてしまったよ。
彼は「ようこそ」と言い、次の言葉は「明日から一緒にがんばりましょう」という 感じだった。


私は現場でわかったことだが、---　たいてい、役者は衣装を見せびらかすために監督に引 っぱり回されるんだ。「この衣装でみんなは賛成かい？」ってね。
彼が働いてる時は、そういう事がたびたび起こるんだ。


彼はあなたの穴だらけのソックスをＯＫしましたか?


ＭＦ: 彼はすべてＯＫしてくれるよ。


自分の外観にはどのくらいアドバイスされますか？


ＭＦ：ほとんど全部だね。 衣装デザインの担当者がいくつか選択したものを持ってきて、 そのいずれも好きでないなら、彼もしくは彼女は、その人が自分のキャラクターを 主張するものに満足するまで、懸命に働くだろうね。


髪型さえも?


ＭＦ：髪型は完全に私が決めてるよ。
私と私の娘の間で決定してるんだ。私は、自分の希望を彼女に話すのさ。





あなたとクリント、2人共音楽好きですよね。 彼と一緒に演奏したことはあるんですか?


ＭＦ：ないね。 私たちがした唯一のことは、ソロ演奏の録音だ。
カーメルの彼のレストランで歓迎されてね。そして、彼はクラークスデールの "Madidi" で、 私のために、一曲録音してくれた。 それは良い交換だったね。
（ Madidi：ミシシッピ州クラークスデールにあるフリーマン出資のレストラン）





演じる役を選ぶとき、あなたはその役のオスカーの可能性を認識していますか?


ＭＦ： してないね。 できないよ。 たとえ私のエージェントが、「君はこの役を受けるべきだ。 これはオスカーにふさわしいと思うよ」って言ったって、それを予測することはできないだろうと思うよ。 そう、役の中に、そして役自体が価値があるから、私は役を受ける。 だから、それとは何も関係ないよ。もしその時にオスカーのチャンスがあるなら、その時はけっこうなことだよ。 問題ないさ。私はそれに対処することができる。


他のキャストメンバーにとってはそうじゃないでしょう?


ＭＦ：ああそうだ、絶対にね。 私を除くどの仲間たちにも少しでもそれについて考えることができるよ。 うん、絶対だ。 幸運を祈るよ。 監督、ヒラリーは確実だね。私にチャンスがあるとは思わないけど---　いや、あるかな！ 私は「レイ」を観てるから、私にチャンスがないだろうと言いたいのさ。 言わんとしてることは、もし、ジェイミー・フォックスが受賞できないなら、正義が全くないということだよ。私は彼に投票してるんだ。


ありがとう、モーガン。


ＭＦ： 君に会えて、とても楽しかったよ。 面白い話題にとても感謝してる--- 私を支持してくれてありがとう。

2004　/　12　/　10

以下のインタビュー記事は、

ＷＧＡ（アメリカ脚本家組合）の特集記事より抜粋したものです。


( http://www.wga.org/craft/interviews/haggis.html )
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Writing Ringside


文：デニス・フェイ(Denis Faye)





ほとんどの映画脚本家は是が非でもポール・ハギスのキャリアを欲しいだろう。
22歳という楽観的な年齢で、Great White Northから初めてロサンゼルスに来た時、彼は即座に 、テレビと映画の脚本家として確実な地歩を占めるという自分の目標がわかった。---　多分、 少なくても目標の半分は。
彼は、テレビのホーム・コメディ "One Day at a Time" の脚本を書く仕事を得た。 そして彼の仕事は、"The Love Boat" 、"Facts of Life!" 、 "L.A. Law" のような番組の仕事まで至った。
彼は、"thirtysomething" の脚本で彼はエミー賞を2部門獲得し、その後は、"Walker, Texas Ranger" 、"Due South" 、"Family Law" といったような自身が企画する番組を展開させるとこ ろまで活動を続けた。


明らかに、彼の楽天主義は彼のカナダなまりと同じくらい目立っていたので、2003年 、50歳に近づいていたハギスは、テレビ界を去って、Ｆ・Ｘ・トゥールの気概あるボク シング・ストーリーの短編集 "Rope Burns" の権利を購入した。
翌年彼は、その短編集の一編である「ミリオンダラー・ベイビー」を映画用の脚本に 脚色することに、 時間を費やし、同時に、ロサンゼルスの人種関係を描いた、 複数のストーリーである、"Crash" という名のオリジナル作品を書いた。


「僕は自分の本能のままに仕事をやってきた。自分の情熱に従ってきんだ」、とハギス は認めている。
「作品を仕上げて、製作者の友人たちに見せると、“ワォ、本当によく書けてるよ、ポール。 でも売れないだろうね”と彼らは言った。でも作品はすぐに売れたよ。うれしかったね」


2005年はポール・ハギスにとって大きな一年である。
1月には、クリント・イーストウッドが監督した、「ミリオンダラー・ベイビー」、 そしてその数ヶ月後には続いて、ハギス自身の監督した「クラッシュ」が公開される。
さらにハギスは、ジェームズ・ブラッドリーが書いたノンフィクションを基にした、第二次 世界大戦の物語である、イーストウッドの次回監督作品 "Flags of Our Fathers" の脚本を 担当する。
仕事の合間に、彼は、米・脚本家組合のインタビューにつきあうため、ちょっとだけ 時間を使ってくれた。








Ｑ："Rope Burns" は、自分にとって、映画界へ移る良いきっかけになるだろうと考えたのは何故ですか？


Ｆ・Ｘ・トゥール --　彼の本名はジェリー・ボイドというんだ -- がＮＰＲ（ラジオ局）で インタビューを受けているのを聞いた時、サンタモニカの高速道路を運転中だったのを覚え てるよ。
彼の意見とか、言葉を表わす方法とか、彼はとても気楽にすらすら話していた。 僕は、"10" フリーウェーで道の脇へ車を寄せて、彼の名前を書き留めた。


僕は一度もボクシングファンであったことはない・・・というのはウソで、僕はボクシング・ ファンさ。試合を見て楽しんでるよ。でもボクシングの舞台裏の世界は知らない。しかし、 この本は一気に僕をその世界へ案内してくれた。
1人の作家が、影にいる人を認めて、その世界の特質と些細な事項を見せてくれるたびに・・ ・素晴らしい切望をまだ抱いている人々が住むどや街で、5セント硬貨1枚以外何も無くなっ た落ちぶれた人々の、その日その日、その時々の人生を知ることはなんともスリルなこ とだった。
僕のために書かれた本だと思ったんだ。いかにも本物の匂いがしたのさ。私はただこう言っ てた。「これを書くべきだ」とね。





Ｑ：そうすると、基本的に、物語のパワーは主題を超越していたわけですね。


まさにその通りさ。その本を読むことは本当に卓越した体験だった。
短編である「ミリオンダラー・ベイビー」は40ページの長さだが、それはこの業界で は非常に効果的なんだ。
僕がしなければならなかったことは、それが二人の中心人物、フランキーとマギー についてのシンプルな物語だったから、このストーリーを置くための巣をつくるという ことだった。
映画を見れば、3人の主要人物とナレーターがいることがわかるだろう。
モーガン・フリーマンとクリント・イーストウッドの間の友情は短編では存在していなかった。 さらにナレーションも無い。クリントの疎遠になった娘はそこにいないから、私はこの オリジナルのストーリーを活かせるような世界を構築しなければならなかった。 そして、それは本当の挑戦だったんだ。





Ｑ：そうするために、他の短編からもエピソードを活用したのでしょうか？


僕が用いたのは、2つの短編だと考えてる。
ひとつは「ミリオン〜」、そしてもうひとつは、"Frozen Water" だった。
“スクラップ”というキャラクターがそこにいたんだ。僕はその人物が気に入ってね。 彼をナレーターにさせて、それぞれ別の物語の人物である、フランキーとスクラップの絆、 友情を創作することを決めたのさ。
ひとつの世界に両者を置いて、そこでは、フランキーにはただ単に試合のマネージャーや 一時的なカットマンでいるよりはむしろジムの所有者にさせて、彼らに30年前のあ る過去の出来事を作ったんだ。それは最高に楽しい作業だったよ。


最初はね、3つの短編をまとめようとしたんだ。でも、それは全くどうしようもなかった。
下書きを終えて、私の友人のボビーモレスコ（"Crash"、"Falcone" の製作者）にそれを 見せたんだ。 「あまりに多くの話があるね」と、彼は言った。 僕が脚本全体を解決する間、彼はそば にいてくれたんだ。
「シンプルに物語を伝えろよ」、ただこう言うだけだが、彼がいてくれて、 大きな助けになったよ。





Ｑ：なぜ自分で「ミリオンダラー・ベイビー」を監督しなかったのですか？


そうするつもりだったよ。最初に僕たちはモーガン・フリーマンとヒラリー・スワンク の出演を取り付けていたんだ。 僕はヒラリー、モーガン、クリントのために脚本を書いたんだ。 書いてる時は、彼らについて何の知識もないから、想像で描いた人たちだった。
だから僕たちはクリントへ脚本を送ることを決めた。製作者のアル・ルディは彼の 友人だったから、彼がクリントへ送ってくれた。
彼は応じてくれたよ。彼は演ずることは引退していたが、彼と奥さんが脚本を読んで気に入ったと話してくれてね。 彼はその役を演じるつもりだったが、監督もしたがっていた。我々がそれをどう思ったかって？ この業界で、僕が再びクリント・イーストウッドと一緒に仕事をする機会を得られそうに なるのはいつになるっていうんだい？ それを逃すなんてバカだから言ったんだ、「どうぞ、もちろん出来ますよ！」とね。
私は譲歩して製作に回ったんだ。


クリントイーストウッドと共に製作するということはね、撮影現場に来て、 「イイ仕事してるね、クリント！」って言うことなんだ。
彼と一緒にいれば製作することなんてないさ。彼は全部を掌握してるからね。 彼は偉大だよ、まさに、そうあるべき流儀は素晴らしいね。 だから彼が必要であればサポートするためにそこにいるけれど、彼は自給自足の映画製 作者なんだ。 彼には、彼の考え方があって、彼が出て行って仕事をするので、製作は、私にはごく わずかな時間しかかからなかったよ。
彼が製作準備を始めていた間、私は "Crash" を撮影してたんだ。そして、彼が撮影して いる間、私は彼のために、彼の次回作の脚本を書き始めたのさ。





Ｑ：第二次世界大戦を題材にした、"Flags of Our Fathers" ですね？


そうだよ。
クリントと僕の政治観がより大きく異なることはないだろうし、そして、戦争に関 する僕たちの見解もより大きく異なることはないだろうから、それは興味深いものだったよ。　 でも彼とスピルバーグが私にこの本を持ってきたんだ。
僕たちがなぜ戦争映画を作らなければならないかを理解するのに僕は長い時間を要した。 僕はそれらを断るため現場に行き続けた。そして、彼は「君ならそれを理解してくれるだろう」 と繰り返し言ったんだ。





Ｑ：たとえあなたにそのような根本的に異なった見解があったとしても、彼はあなたが脚本を書くことを望んだのでしょうか？


ああ、そう思うね。彼はそういう点が偉大な人だよ。 僕たちは、両方が気に入る脚本に達したんだ。
彼が僕にその脚本を書く事を依頼するために電話してきたのは、彼が「ミリオン〜」を 監督することに同意してから3週間後のことだった。
「君に脚色を考えて欲しい本があるんだ」、と彼は言った。僕は、「そりゃあ本当にスゴイ、 光栄です。でも、あなたの手には、僕の（「ミリオンダラー・ベイビー」の）最初の草稿 があるはずですから、まず最初にそれについて僕に注意を与えてくれたほうがよいと思う のですが」と言った。
彼は「脚本は良い出来だよ」と言ってくれた。そして彼は私の最初の草稿のまま撮影し てくれたんだ。 青いページ、ピンクのページが1つもないのには、本当に唖然としたよ。全く白い脚本だったんだ。 （注：脚本をリライトした場合、修正箇所は違う色のページに差し替える） すごい!　僕は多分脚本を変えていただろうと思うからね。
私が書いて監督した、"Crash" の脚本は、マルチカラーだった。--- それは僕自身が書いて、 僕がリライトしたんだ。





Ｑ：テレビ界で書いていた数年間を、他の映画脚本家とどのように区別しますか？


問題は、僕がひどい作家でいる非常に長い間、とても良い生活をしていたということだね。
それは、僕が、"thirtysomething" の脚本を書き始めたばかりの頃だった、--- 僕は30代半 ばだった ---、（シリーズ創造者の）マーシャル・ハースコビッツとエド・ズウィックが 書く方法を私に教えてくれた。
彼らはごくシンプルに僕に基本的な質問をした、そして、僕は答えることができなかったんだ。 「君は何について書いてるんだ？」みたいな感じでね。 そして「これは君にとってどういう意味があるのか？」って。 僕は言った。「これは著しい筋の展開と、対話における気のきいた台詞についてです」ってね。


それから僕は、「う〜ん、僕は自分の人生を考察して、自分の精神を深く掘り下げて考えて 、これが僕にとってどういう意味を持つのかについて理解するべきだ」と考え始めたんだ。 それは長くて、時間のかかる過程だったが、そう出来て良かったと思うよ。
もしこのような題材を全く書いていなかったら、もし、20代や30代で脚本・監督した映画を撮っていたら、そういった作品はかなり悪いものになっただろうと考えるんだ。 それから、僕はすぐに失業して、今は第二の仕事に就いてるだろうね。
僕は十分に時間をかけて、自分の身体の組織から全ての悪文を取り出したと思ってるよ。 アメリカの一般大衆に、そういう悪い作品の全てを見させたことを謝罪したい。





Ｑ：人生の実態に（ "Facts of Life!" ）には何も間違ったことは無いと。


（注："Facts of Life!" はハギスのテレビでの脚本作品。ここでは2重の意味をかけている？）


どうもありがとう（笑）。
ある時、こんなことがあったよ。---　僕は傲慢についてのこのような話が大好きなんだ --- 僕は才能のある人たちを発掘しているモントリオール・コメディ・フェスティバルにいた。 僕はちょうど "thirtysomething" で、2つのエミー賞を獲得したばかりだったが、ある男が近づいて来て言ったんだ、「ハギスさん、ハギスさん！　あなたのサインをして頂けますか？」と。 そして僕がサインしていると、彼が言った。 「僕は、あなたがこれまでに書いた "Facts of Life!" のエピソードを全部見てますよ」。
僕はサイン帳を彼に押し戻して言ったんだ、「どうもありがとう、それじゃ今すぐ、ここから出ていってくれ」ってね（笑）。





テレビにおける僕のシンボルマークはいつも地面に急降下しているイカロスだった。 僕たちはこのビジネスの中では、自分自身を真剣に受け入れることができない。 僕たちは、やることをやれて、まさに幸運なんだ。
僕たちは１０回間違うことによって、１段階向上する。テレビ界では、どんなに多く の間違いを犯しても、それと同じ分だけ書くことで許されてしまうのさ。





Ｑ：何人かの上位にいる作家は反対の方向に進んでいる現在、なぜあなたは、ＴＶ界から映画界へ進んだのですか？


そうだな、僕は昔からちょっとした因習打破主義者なんだ（笑）。何にでも正反対 の立場を取るのが好きなんだね。
僕は天才であると考えているジム・ブルックスの先例にならおうと、この先何年間もテレビ と映画の仕事を両方やってみようとする時点に来ていた。
彼がどうにかそれができている、だから僕も試みてみたけど、自分にはうまく行か なかったんだ。
私は決断しなければならなかった。テレビ界では成功したが、より高い段階に上がること に見事に失敗したので、映画でも同じことをやってみようと考えたんだ。 時間をかけて、すべての依頼を断って、だめもとで２本の映画脚本に賭けたんだ。





Ｑ：それは大きなギャンブルでしたね。


そう、とても大きなギャンブルさ。特にジェリーボイドがオプション権のために、それ ほどのべらぼうな金額を望んだからね！ それは解放された経験だったが、怖くもあった。
妻と僕はじっくり腰をすえて話し合った。 「僕たちは、この大きな家と扶養する子供たち全員と、この途方もないライフスタイル を送っている。 今から僕たちは、映画に着手している間、もしかしたら2〜3年は、収入がなくなり そうなんだ。」と言うと、彼女は、 「けっこうよ、もし私たちが家を売らなきゃならないなら、売ればよいわ。これを やるというのなら、やればよいでしょう。あなたは好きなことをやるべきだわ」と。
僕たちは自宅を抵当に金を借りた。そして最後までうまくやり遂げたのさ。

2004　/　12　/　?