クリント・イーストウッド　作品紹介

イタリア映画　出演作品　（マカロニ3部作）



荒野の用心棒
　PER UN PUGNO DI DOLLARI
　(米題:A FISTFUL OF DOLLARS)


作品情報

監督・脚本：セルジオ・レオーネ

出演：クリント・イーストウッド（ジョー）/マリアンネ・コッホ（マリソール）/ジャン・マリア・ヴォロンテ（ラモン・ロホ）/ホセ・カルヴァト（シルヴァニト）/ウォルフガング・ルクシー（ジョン・バクスター）/ジークハルト・ルップ（エステバン・ロホ）

製作：アリゴ・コロンボ/ジョルジュ・パピ
原作：黒澤明作品「用心棒」より（61年、脚本：菊島隆三、黒澤明）
脚本：デュチオ・マッサリ/ヴィクトール・Ａ・カテナ/ジェイム・コマス
撮影：マッシモ・ダラマーノ
編集：ロベルト・サンキーニ
美術：カルロ・シミ
音楽：エンニオ・モリコーネ
配給：（日本）東和　（米）ユナイテッド・アーティスツ

1964年/イタリア・西ドイツ・スペイン/オリジナル1時間40分　米公開版1時間36分/テクニカラー・テクニスコープ/日本公開1965年12月25日、米公開1967年2月2日

ストーリー

　無法者の横行する1872年のニュー・メキシコ。
　ある日ジョー（イーストウッド）という、腕利きの男が現われ、この町を二分するロホ兄弟 の方に身を寄せることになった。もう一方の旗頭モラレスの手下四人を鮮やかに片づけたか らだ。

　ジョーは酒場の亭主からこのニつの勢力が町の皆から煙たがられていることを知り、 その厄病神どもを始末しようと考えた。
　一計を案じて両派を反目させることに成功、ロホ兄弟はモラレス家に殴り込みの準備をした。
　兄弟の弟ラモン（ジャン・マリア・ヴォロンテ）がマリソール（Ｍ・コッホ）という子持ち女 を自分のものにしようと監禁しているのを知ったジョーは、見張りの手下を始末し、 母子を逃がした。これをモラレスの仕業と見せかけたつもりだったが、ラモンに見破られ、 マリソルの行方を自白させようと激しいリンチを加えられたが、ジョーは口は割らなかった。

　夜、半死半生のジョーは、スキを見てロホ家をぬけ出し、棺桶屋のオヤジの手引で安全な隠れ 家に身を寄せた。彼の失踪にあわてたラモンたちは酒屋の亭主を捕えて居所を教えろと迫った が果さず、ついにモラレス家に殴り込みをかけ、不意を襲われたモラレスは簡単にやられ てしまった。

　ラモンは酒屋の亭主を通りの真中でリンチを加えた。ジョーをおびきよせるためである。
静まりかえった町に姿を現したジョー・・・。

メモ

　史劇のスペクタルの助監督からようやく一人立ちしたレオーネ監督が 「用心棒」にインスパイアされ、ストーリラインを友人の協力を得てローマのアパートで 三週間で書き上げた。

　主演にはヘンリー・フォンダを考えていたがギャラの面で断念、次にオファーしたＣ・ブロンソン、Ｊ・コバーンにも断られ、 仕方なくいろいろな役者に当たっているうちに、リチャード・ハリスが「ローハイド」で 人気者になっていたイーストウッドを推薦した。
　「ローハイド」の出演を物足りなく感じていたイーストウッドはアルバイト感覚で出演を承諾し たが、結果的にはマカロニ（スパゲッティ）ウエスタンブームの先鞭をつけた伝説的作品と なった。

　実際に会ったイーストウッドの外観を「軽い」と判断したレオーネは“顎鬚、ポンチョ、葉巻”の 三点セットで主人公の年を取らせる事にしたという。
　ただこの衣装はポンチョ以外はイーストウッドが「ローハイド」の小道具から流用した ものだった。

　「用心棒」の盗作問題が訴訟となり、決着する67年までは米公開はお預けになった。
　また米公開を考えた製作者の意向で監督名（レオーネ＝ボブ・ロバートソン）始めスタッ フ・キャストの名前がアメリカ風に変えられている。





夕陽のガンマン
　PER QUALCHE DOLLARO IN PIU
　(米題: FOR A FEW DOLLARS MORE)



作品情報

監督・原案・脚本：セルジオ・レオーネ

出演：クリント・イーストウッド（モンコ）/リー・ヴァン・クリーフ（モーティマー大佐）/ジャン・マリア・ヴォロンテ（エル・インディオ）/クラウス・キンスキー（せむし男）/ジョーゼフ・エッガー（老人）

製作：アルベルト・グリマルディ/オッタヴィオ・オッポー
原案：フルビオ・モルセーラ
脚本：ルチアーノ・ヴィンチェンツォーニ
撮影：マッシモ・ダラマーノ
編集：アラビソ・セラソンガ/ジョルジョ・セラソンガ
美術：カルロ・シミ
音楽：エンニオ・モリコーネ
配給：ユナイテッド・アーティスツ

1965年/イタリア・スペイン・西ドイツ/2時間10分/テクニカラー・テクニスコープ/日本公開1967年1月20日、米公開1967年5月

ストーリー

　二人の賞金稼ぎにが町にやってくる。
　初老のモーティマー大佐（Ｌ・Ｖ・クリーフ）と若いモンコという男（Ｃ・イーストウッド）である。
　この二人お互いに相手を知らなかったが、共通の目的はインディオ（Ｇ・Ｍ・ヴォロンテ）と 呼ばれる凶悪な殺人鬼を探し、殺すことだった。賞金は二万ドル。
　このときインディオは牢獄を脱走し、仲間と一緒にエル・パソの銀行を襲撃する計画をねって いた。
　これを知った二人は、一人がインディオの仲間に潜入し、手引きをした末に彼を殺すことに決めた。そしてモンコが潜入する役を引きうけることに なった。

　銀行襲撃の日、まんまとインディオ一味に加わったモンコは内部から、大佐は外からインディ オを倒すことに手はずをととのえた。ところが素早いインディオのため計画は失敗する。

　やがてメキシコ領の小さな村で略奪品に手を出したモンコと大佐は、インディオの手下に 捕えられてしまった。
　だが二人を助けて自分の手下を殺させその上で二人を殺そうというのがインディオの考えだった。 結果は二人の銃弾に手下は皆殺しになり、さらに大佐はインディオの銃の前に立たされる。

メモ

　「荒野の用心棒」撮影中、スタッフと監督の口論に辟易していたイーストウッドは 製作終了後にすぐ帰国した。
　映画がヒットするとは信じていなかった彼は、ローマから送られてきたニュースを見て はじめて大ヒットを自覚したのである。

　アメリカではまだ公開されておらず、あいかわらずＴＶ俳優のままだった彼は、喜んで 出演を承諾した。
　予算も前作の20万ドルから60万ドル、イーストウッドのギャラは1万5000ドルから 一挙に5万ドルプラス歩合になった。

　撮影前にイーストウッドはレオーネにこう言ったという。
　「なあ、セルジオあんたの望むことなら何でもするよ。でも葉巻だけは勘弁してくれ！」





続・夕陽のガンマン　地獄の決斗
　IL BUONO,IL BRUTTO,IL CATTIVO
　(米題: THE GOOD,THE BAD,AND THE UGLY)

作品情報

監督・原案・脚本：セルジオ・レオーネ

出演：クリント・イーストウッド（ブロンディ）/イーライ・ウォラック（テュコ）/リー・ヴァン・クリーフ（エンジェル・アイズ/セテンサ）/マリオ・ブレガ/ルイジ・ピスティーリ /クラウディオ・スカルチェッリ

製作：アルベルト・グリマルディ/フェルナンド・サンキーニ
原案：アージェ・スカルベッリ　「The Magnificent Rogues」より（英語版：ミッキー・ノックス）
原案・脚本：ルチアーノ・ヴィンチェンツォーニ/トニーオ・スカルベリ
撮影：トニーノ・デッリ・コッリ
編集：ニーノ・バラグリ/エウジェニオ・アラビソ
美術：カルロ・シミ
音楽：エンニオ・モリコーネ
配給：ユナイテッド・アーティスツ

1966年/イタリア/オリジナル3時間、日本版2時間41分、アメリカ版2時間40分/テクニカラー　テクニスコープ/日本公開1967年12月23日　米公開1968年

ストーリー

　南北戦争末期の西部。
　ブロンディ（Ｃ・イーストウッド）とテュコ（Ｅ・ウォラック）の二人はコンビを組んで賞金 をかせいでいた。
　テュコが人を殺し、賞金つきのお尋ね者となる。そのテュコをブロンディがとらえて賞金 をうけとりテュコが絞首刑という寸前にブロンディが救い出す、といった方法だ。

　だが、この商売も次第にあぶなくなってきたので、ブロンディはテュコを捨て、去っていった。 怒ったテュコは、ブロンディを罠におとしてとらえ、砂漠の中で痛めつける。
　その時、南軍の兵士の死体をのせた馬車が疾走して来る。その中に唯一人瀕死の兵士がおり、 水を求めていた。その兵士が墓地に隠した二十万ドルのありかを知っているというので、 テュコは水を取りに行ったが、戻ってくるとすでに死んでいた。
　ブロンディはその墓の名を聞いていた。墓地の名をテュコが、墓石の名をブロ ンディが知っているということで、二人は再び相棒になるしかなかった。

　二人は南軍の軍服を着込み、救護所へもぐり込んだが、その軍服のために北軍の捕虜となり、 収容所にぶち込まれてしまった。
　その収容所には以前から隠した二十万ドルを探していたセテンサ（Ｌ・Ｖ・クリーフ）がおり、 二人はさんざん責められた。
　ブロンディがいくら拷問をかけても口を割りそうにない男だとみたセテンサは、 同盟を結び一緒に金を捜すことにした。
　だが出来ることなら金を全部一人占めにしたいと思う三人は、それぞれに相手を出し抜こうと争う。

メモ

　「ローハイド」への出演があるためアメリカに帰らなければならないイーストウッドだったが、 既に3本目の契約をレオーネと交わしていた。
　前作はまたしても大ヒット、今回の予算は１２０万ドル、イーストウッドのギャラは２５万 ドルになっていた。
　イーライ・ウォラックの役には、前回リー・ヴァン・クリーフへの役をオファーされていたブロンソン に再びオファーしたが、また断われていた。
　結局3部作に一度も出なかったブロンソンは後年に、「役を断ったのはバカだった。」と 語っている。

　南北戦争中の物語というのは前2作と時代は戻っているが、レオーネ自らワシントンの国会 図書館に出かけてこの時代を詳しく研究し、何百枚という写真を持ち帰って、撮影中にはた えずそれを参照、アメリカの歴史を忠実に描いたウエスタン史劇となった。

　アメリカ版は約19分カットされたが、2003年5月にマーティン・スコセッシのプロデュースで オリジナル版を復刻、台詞もイーストウッドらが吹き替え直して、再公開された。





華やかな魔女たち　第五話・「またもやいつも通りの夜」
　LE STREGHE　〜　UNA SERACOME LE ALTRE
　(米題: WITCHES　〜　A NIGHT LIKE ANY OTHER)


作品情報

監督：ヴィットリオ・デ・シーカ

出演：クリント・イーストウッド（カルロ）/シルヴァーナ・マンガーノ（ジョバンナ）/コリンヌ・フォンティーヌ/ジャンニ・ソーリ/ /バレンティーノ・マッチ

製作：ディノ・デ・ラウンティス
脚本：チェザーレ・ザバッティーニ/ファビオ・カルピ/エンツォ・ムッツィ
撮影：ジュゼッペ・ロトゥンノ/ジョゼッペ・マッカリ
音楽：ピエロ・ピッチオーニ/エンニオ・モリコーネ
配給：ユナイト・アーティスツ

1966年/イタリア・フランス/オリジナル1時間58分　日本版1時間40分（第五話は19分）/テクニカラー　ビスタサイズ/日本公開1967年11月25日

ストーリー

〔第五話・またもやいつもの通りの夜〕

　夫のカルロ（Ｃ・イーストウッド）がいつも疲れて会社から戻り、 かまわずに眠ってしまうので、妻のジョバンナ（Ｓ・マンガーノ）は欲求不満だった。
　その欲求不満はさまざまの幻想を生んだ。多くの男たちに崇拝される彼女。 男たちを興奮のるつぼに陥れる彼女−−。

　そんなある日、珍らしく夫が彼女のネグリジェをほめた。彼女は胸をときめかせた。 が、ベッドへ入ると夫は彼女の肩に頭をのせたままねむってしまった。

メモ

　イタリアの大プロデユーサー、ディノ・デ・ラウンティスが、当時の夫人で女優の シルヴァーナ・マンガーノのために製作、マンガーノが全五話にそれぞれ別の役で主演する オムニバス作品の最終話。
　（他の話の監督はルキノ・ビスコンティ、ピエル・パオロ・パゾリーニ、マウロ・ボロニーニ、フランコ・ロッシ）

　イーストウッドがローマのスタジオでダビング中にデ・シーカ監督にちょい役で出ないかと言われ、出演した。
背広姿でメガネをかけた会社員の夫という役は、アメリカでマカロニ西部劇のスターで売りだし始めた イーストウッドのイメージを損ねるという理由で、配給のユナイトがアメリカ公開を お蔵入りにしている。

　現在まで国内ではビデオやＤＶＤのソフトは出ていないものの、地方のＴＶの洋画番組等で唐突に放送されることもある。


FILM-INDEX <<<< MALPASO WORK >>>> HOME